学校管理下の傷害発生と学校環境要因
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1991年4月から1年間にわたって日本体育・学校健康センター滋賀県支部に報告された災害報告書(災害共済給付金申請に伴う報告書)ならびに滋賀県教育委員会の学校便覧および施設台帳を調査資料として,小学校における学校環境条件,すなわち各小学校児童1人当たりの校地,校舎,体育館,教室の各面積,ならびに全校児童数,1クラス当たり児童数と,その小学校管理下の全傷害発生率および骨折などの7群の傷害発生率(在籍児童100人当たりの年間傷害件数)との間に如何なる関連が認められるか,またそれらの学校環境条件がどの程度傷害の発生に寄与しているかを調査検討した。<BR>1) 各小学校の児童100人当たりの全傷害発生率平均値は5.43件を示した。<BR>2) 小規模校(全校児童数443人以下)では,大規模校(全校児童数443人以上)にくらべて,全傷害発生率は高値を示した。また小規模校では,全傷害および骨折の発生率は児童1人当たりの校地,校舎,体育館および教室の各面積が広くなると発生率が高くなる傾向を示し,全校児童数および1クラス当たりの児童数との間では,児童数が少ないと発生率が高値を示した。<BR>3) 上記傷害発生率の変動を明快に説明出来る論拠は不明であるが,小規模校では,児童1人当たりの教員数が多いこと,年間の傷害発生数が相対的に少ないことなどから,受傷児童に対するきめ細かい対応が可能なため,学校規模が小さいほど災害共済給付申請がなされやすいというバイアスの存在が考えられた。<BR>4) 傷害発生率の平方根変換値を従属変数,学校環境要因項目を独立変数として,STEPWISE法による重回帰分析を行った結果,一般に小規模校,大規模校のいずれでも,重回帰モデルに採用された変数は傷害の種類によって異なり,また得られた重回帰モデルでは発生率の変動を十分説明出来なかった。発生率の変動要因は本研究で用いた環境要因以外にも存在することが示唆された。<BR>5) 7群の傷害のうち,全対象校および小規模校における骨折の重回帰モデルにはいずれも校地面積が変数選択され,モデルは骨折発生率の全変動の20%以上説明できた。骨折発生率の変動に及ぼす学校環境条件の影響は,骨折以外の傷害にくらべて多少大きかった。<BR>6) 本研究結果は,治療費が3,000円以上(診療報酬点数300点以上)の場合についてであるので,学校管理下における事故災害発生防止対策を考える場合には,治療費が3,000円未満あるいは医師の治療を受けない軽微なケガ等についても考慮する必要がある。
- 日本衛生学会の論文
- 1996-02-15
著者
関連論文
- 小・中・高等学校における日々の疾病発生状況 : 2001年および2004年における観察
- 小・中・高等学校における日々の傷害発生状況(2001年および2004年における調査結果)
- 女子学生の排便およびその日間変動 第1報 : 排便量と食事や生活習慣などの実態
- 卒業後の志望進路と学生の資質
- 運動トレーニング前後のハチミツレモン水投与効果についての調査研究
- 学校管理下の傷害発生と教員数・児童数要因
- 学校管理下における小・中学生の傷病発生頻度
- 学校管理下における日々の傷害発生と学校環境要因 : 小学校児童についての観察
- 小学校における日々の傷害発生と学校規模要因
- 女子学生の貧血に関する調査研究 : 貧血者の頻度と食生活状況
- 大津市スポーツ少年団員におけるケガの発生要因についての疫学的研究
- 学校管理下の傷害発生率と学校環境要因間の関連
- スポーツ運動時の糖質補給効果についての調査研究
- 学校管理下の傷害発生と学校環境要因
- 琵琶湖の漁獲量とその周辺環境要因との関連
- 小学校における保健の授業に関する教員の意識 : 自由記述の内容
- 琵琶湖の漁獲量とその周辺環境要因 : 漁獲量の年次推移ならびに漁獲量と環境要因との関連
- 小学校の「保健」授業に関する教員の意識
- 小学校の「保健」授業に関する教員の意識
- 学校管理下における傷害発生と児童密度
- 学校管理下における傷害発生と学校環境要因間の相関
- 527.スポーツ少年団活動におけるケガと発生要因
- 日々の体重変動と生活・環境要因
- 滋賀県公立小学校における傷害発生についての調査研究
- パソコンを用いた大学生の1日エネルギ-消費量推定方法の検討
- 学校管理下の傷害発生防止について
- 傷害発生についての調査研究 : 中・高校生における創傷について
- 体育授業における傷害発生
- 小・中・高等学校における日々の傷害発生状況(2001年および2004年における調査結果)