<原著>耳科用ドリルによる耳小骨振動後の血管条血管の透過性亢進に対するステロイドの効果
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概要
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中耳手術におけるドリルの振動が,手術後の感音難聴の原因の一つと考えられている。モルモットを用いて耳小骨にドリル誘発性損傷を与えた結果,血管条血管の透過性がドリル振動時間に依存して有意に増加していることが報告されている。今回は振動負荷後の血管条血管の透過性九進を防止させることを目的とし,振動負荷前にステロイドを投与し,振動負荷後の血管条血管の透過性の変化を検討した。血管透過性のトレーサーとしてhorseradish peroxidase(HRP)を使用し,hydrocortisone,HRP静注後60秒間ドリル振動負荷を耳小骨に与え,電子および光学顕微鏡下にHRPの血管条内の動向を検討した。その結果,振動負荷前にステロイドを静注することによって,血管条血管からのHRP漏出が減少していることが確認された。これは投与されたステロイドが,ドリル振動負荷により充進する血管条血管の透過性を抑止したものと考えられた。ドリル振動負荷による血管条血管の透過性亢進は血管内皮細胞の損傷によるものと考えられ,活性酸素の関与が推測された。
- 獨協医科大学の論文
- 2003-03-25