ドイツの2011年センサス法と人口・住宅センサスにかんする欧州連合規約(その1)
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概要
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ヨーロッパにおける人口センサスの方法転換過程は、2010年ラウンド世界人口センサスにおいて、多くの困難と妥協をはらみながらも、着実に進展している。とくにドイツの2011年人口センサスは、1990年代より、統計登録簿型センサスへの移行に向けて、長躯の里程を辿ってきたが、一つの到達点を迎えている。それは、一般的に言われてきた統計登録簿型センサスが成立する社会的組織的な条件(とくに人口移動・変動が少なく、かつ小規模人口の国、および統一的な個人識別番号制度の存在)を欠いているだけに、大規模かつ複雑な行程を抱えている。しかも、短くない歴史をそなえ、完成の域に入りつつある北欧諸国の統計登録簿型センサスと違って、方法転換過程が眼前に進行するドイツのセンサスは、「歴史的実験」とも形容できることから、センサス革命の方向性に関心を向ける者にとって、好個の統計事象として捉えることができる。そして、センサス過程の新しさと大きさを反映して、センサス法も、センサス準備法(Gesetz zur Vorbereitung eines registergestuetzen Zensus2011:2007年11月成立)とセンサス指定法(Gesetz zur Anorodnung des Zensus 2011:2009年5月成立)の2段構えをとっている。センサス過程を規制し、体系づける法規を、ここに訳出する所以である。ところで、市場統合から通貨統合へと深化し、さらには財政統合を展望する欧州連合は、構成国の統計実践にとっても、規定的な要因として作用している。2008年7月9日に成立した欧州連合のセンサス規約(Verordnung (EG) Nr.763/2008 ueber Volks-und Wohnungszaehlungen)は、2010年ラウンド人口センサスを契機として、立法が進められてきたにもかかわらず、構成国におけるセンサス基本法の性格をそなえている。それは、第1に、これまで、「指針(Guideline, Leitlinie)」として「紳士協定」に止まっていた欧州共同体のセンサス法規にたいして、構成国に全面的な拘束力を行使する規約(Regulation, Verordnung)となっているからである。第2に、本センサス規約は、構成国におけるセンサス法規の目的規定、概念規定や精度規定に条文化されている。さらに、本規約では、2011年を最初のセンサス年として、以降、人口センサスが10年周期で実施されなければならないことが定められたからである。したがって、本規約は、ドイツセンサス法にとって「外部的な制約条件」としてではなく、その成立を促す「内部的な基本フレーム」として位置づけられなければならない。本資料でも、新しいドイツセンサス法の内容と性格を把握するための前段として、訳出する。
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