第三回千葉医学会奨励賞 プロテオミクスの手法によるラミンAの機能解析 : 早老症であるHutchinson-Gilford Progeria Syndromeにおける動脈硬化性疾患の原因解明に向けて
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概要
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老化や死は,生物にとって避けることのできないものであり,長年に亘って老化に関する研究や議論が続けられている。早老症は,若い頃から老化の生理学的特徴を示すものであり,Hutchinson-Gilford progeria syndrome(HGPS)が促進的な老化過程と類似していることから,同疾患は老化研究のモデルとして注目を浴びている[1]。 HGPSは平均寿命13歳,主な死因は心筋梗塞等の動脈硬化性疾患である。本疾患は,核膜の裏打ち構造の構成タンパク質であるラミンAが部分欠損することで生じる常染色体優性遺伝病である[2]。このように,疾患の原因遺伝子および変異はわかっているものの,その発症機構は解明されておらず,特に,タンパク質レベルでの詳細な研究は未着手であった。 そこで,最新のプロテオミクスの手法を用いて,原因遺伝子である,野生型および変異型ラミンA相互作用タンパク質の網羅的な解析を行った。その結果,野生型ラミンAに対する相互作用が新規であり,かつ変異型ラミンAにおいて相互作用の消失するタンパク質が同定された。また,変異型ラミンAの導入に伴い,老化した血管の細胞において新たに同定された分子をノックダウンすることで,その細胞死を防ぐことができた。さらに,変異型ラミンA導入に伴う細胞の形質の確認を行う過程で非常に興味深い結果が得られた。すなわち,HGPS患者の主な死因は動脈硬化性疾患であることから,血管の細胞に変異型ラミンAを導入したところ,通常とは異なるHGPSに特徴的な動脈硬化性疾患を実験上,再現できたのである。 今回得られた新たな知見は,HGPSの病態に迫るものであると考えられるので,ここに報告したい。
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