ダイオキシン類と免疫
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概要
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ダイオキシン類とはpolychlorinated dibenzo-p-dioxins(PCDDs),polychlorinated dibenzofurans(PCDFs),coplanar polychlorinated biphenyls(coplanar PCBs)の総称で,いずれも2つのベンゼン環が塩素で置換された類似した構造を持つ.塩素の位置と個数により多数の異性体が存在し,最も毒性が強い2,3,7,8-tetra-CDD(TCDD)の毒性を1とした場合の相対的な毒性(toxic equivalent factor)が約30 の異性体について決定されている.ダイオキシン類の急性毒性として,塩素?瘡,肝障害,胸腺萎縮,脂質代謝異常,体重減少などが挙げられる.一方,ダイオキシン類は脂溶性で極めて安定した物質であり,生体内に長期にわたって残留するため,発癌性や次世代への影響,免疫系への影響などの慢性毒性が懸念されている.このようなダイオキシン類による慢性毒性はマウスなどの実験動物では報告されているが,ダイオキシン類に対する感受性は種差が極めて大きいこともあり,ヒトへの影響はほとんどわかっていない.ヒトに対するダイオキシン類の長期的な影響をうかがう唯一の手段は,1960 年代から1970 年代にかけて発生した大規模なダイオキシン中毒事件・事故である,(カネミ)油症,セベソ事件,台湾油症などの被害者を対象としたコホート研究であるといえる.油症は1968 年に福岡県,長崎県,広島県など西日本を中心に発生した,複数のダイオキシン類が混入した食用油による食中毒事件である.約2000 人の被害者が確認されており,現在でも被害者の血中ダイオキシン類濃度は健常人に比べて極めて高い(表1).九州大学では油症発生以来,被害者の追跡調査を行っている.本稿ではダイオキシン類による免疫系への影響について,これまでに基礎研究で明らかにされた事項と油症患者の協力により得られたデータについて紹介する.
- 2011-11-25
著者
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