バッテリーと塗料工場における無機鉛曝露 : ヒトの精子の形態と機能に対する影響
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概要
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鉛は工業的に重要な重金属の一つで,バッテリーや塗料工場労働者の男子に生殖障害を引き起こすことが知られているが,ヒトの精子の形態と機能に対する影響に関する情報は限られている.従って,これらの労働者における精子の形態と機能に対する鉛の影響を研究することは重要である.精子の蛋白と核酸濃度の低下を伴う乏精液症と精子DNAの高倍数性の割合から,職業性の鉛曝露によって,精子細胞の産生が低下する事が示唆される.精子の活動性の低下,高濃度のマロンディアルデヒドと精子細胞表面の障害を示唆する精液アスコルビン酸レベルの変化を伴う低浸透圧下での膨化した精子の割合の増加は鉛曝露による膜脂質の過酸化の上昇と非酵素的抗酸化防御の低下によるものと考えられる.精子膜表面の変化はまた,走査電子顕微鏡により明らかにされ,原子間力顕微鏡によりさらに確実にされた.精液粘度の低下と運動能力を失った精子を含む各方向と前方への運動性の低下から,鉛曝露を受けた労働者での精子の活動性の遅延が示唆される.このことは精液のフルクトースレベルの上昇と精子のATPaseの活性の低下によりさらに支持される.奇形精子の割合の増加もまた,血液と精液中の鉛濃度レベルの上昇と関連がある.従って,これらの結果からバッテリーや塗料工場労働者では鉛は精子数に影響を与えるのみでなく,精子の形態,膜の構造,運動や機能にも障害を与えることが示唆される.
- 2006-06-01
著者
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チャウドハリー エイ・アール
インド医学研究評議会 地域職業研究センター 産業中毒部門 カルカッタ インド
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ナハ エヌ
医科学大学 生理学教室 チトワン区 ネパール
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ナハ エヌ
医科学大学 生理学教室 チトワン区 ネパール:インド医学研究評議会 地域職業研究センター 産業中毒部門 カルカッタ インド