茶育種50年のあゆみ (茶品種登録50年の総括と今後の育種の展開方向)
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概要
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わが国のチャの育種は明治時代になって開始された.初期の育種では杉山彦三郎など民間育種家が大きな役割を果たした.組織的な育種が開始されたのは昭和になってからである.特に,鹿児島県農業試験場知覧分場で行われた紅茶用品種育成のための交雑育種は大きな成果をあげた.戦後緑茶用品種でも本格的に交雑育種が始まり,1980年代以降多くの優良品種が育成されるようになった.品種登録制度は1953年に茶にも摘要されるようになり,同年に15品種が登録された.現在は52品種が登録されている.品種の普及には1950年代に確立された挿し木繁殖技術が大きな役割を果たした.1970年代以降わが国の茶園の品種化が急速に進み,生産量と品質が大きく向上したが,現在は‘やぶきた’一品種の寡占状態によりいろいろな弊害が見られるようになった.茶は最近飲料以外にも用途が拡大し,これらの分野は今後有望なマーケットになると予想される.このため育種目標が次第に多様化してきており,今後遺伝資源の充実とその利活用のための評価が重要となる.