宮崎県の紅斑熱リケッチア症:—つつが虫病との臨床的鑑別点について—
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概要
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昭和58年から昭和62年の5年間に宮崎県下で5例の紅斑熱リケッチア症を経験した。初診時診断はつつが虫病であつたが, 血清学的検索で本症と確定診断した。症例は43才女子(発症昭和58年10月), 72才男子(昭和60年6月), 68才男子(昭和61年4月), 51才女子(昭和62年5月), 73才女子(昭和62年8月)で, 感染地域は山野3例, 河川1例, 不明1例であつた。潜伏期間は5日1例, 10日2例, 不明2例で, 全例とも高熱, 頭痛, 倦怠感, 食思不振などの全身症状を訴えた。全例に刺し口, 全身性紅斑があり, 3例には出血を認めた。肝脾腫, 全身性リンパ節腫大はなかつたが, 2例には所属リンパ節腫大がみられた。急性期の検査成績では全例赤沈亢進, CRP陽性, 好中球の核左方移動, 軽度肝障害, 正常範囲内での血小板減少を示した。リンパ球減少は2例にみられ, そのうち1例では異型リンパ球(1%)を認めた。治療としてミノサイクリン投与が著効した。本症の新型つつが虫病との鑑別点としては, 1)春から秋にかけて発生し, 2)潜伏期は比較的短いこと, 3)出血を伴う紅斑や4)急性期に白血球増多傾向がみられること, また5)全身性リンパ節腫大がないことなどが考えられた。
- 日本皮膚科学会西部支部の論文
著者
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谷口 武臣
田野町立病院外科
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田尻 明彦
県立宮崎病院皮膚科
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成田 博実
県立宮崎病院皮膚科
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川名 修徳
県立宮崎病院皮膚科
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麻生 昭典
麻生医院
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山縣 英士
鈴木病院
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後藤 政治
後藤内科胃腸科医院
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比江嶋 睦典
皮膚科比江嶋クリニック