心室波消失の原因が特定できなかったフリースタイル生体弁機能不全の1例
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概要
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症例は59歳,女性.55歳時,他院で大動脈弁狭窄症に対しフリースタイル生体弁〔FS生体弁(Medtronic,Minneapolis,MN,USA)〕を用いてサブコロナリー法で大動脈弁置換術を施行された.当院循環器内科外来に定期的に通院中であったが,術後4年目に胸痛を自覚し救急で外来受診された.胸痛時心電図(electrocardiogram;ECG)でST 低下を認め,緊急心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈に狭窄を認めず,Sellers分類Ⅳ度の大動脈弁閉鎖不全とⅢ度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.入院時うっ血性心不全をきたしており,心不全治療後の手術を考慮した.入院翌日再度胸痛を自覚され,その直後完全房室ブロックから心停止となった.心肺蘇生,一時的ペーシング挿入を行い,緊急で大動脈弁再置換術・僧帽弁置換術を施行した.FS生体弁は左冠尖の弁尖に15mm長の穿孔を認めた.術中・術後もECG上で自己波が全く出現しないことから,一時的ペーシングを継続した.また,術後心不全に対し大動脈バルーンパンピング補助を6日間行った.術後8日を経過しても自己脈の出現を認めないことから,ペースメーカー移植術を施行し,術後12日目に人工呼吸器から離脱した.以後の経過は良好であった.FS生体弁の病理所見では感染を疑う所見は認めず,弁尖の変性壊死所見を認め,構造的劣化が原因と考えられた.FS生体弁を含めすべての人工弁で機能不全を起こす可能性があることから,定期的な経過観察は重要である.特に胸痛など症状を認める症例では入院とし厳重な管理を行い,早期の手術を考慮すべきと考える.
- Japan Heart Foundationの論文
著者
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森田 雅文
京都桂病院心臓血管センター外科
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常深 孝太郎
京都桂病院 薬剤科
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吉井 康欣
京都桂病院心臓血管センター・外科
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森田 雅文
京都桂病院心臓血管センター・外科
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三重野 繁敏
京都桂病院心臓血管センター外科
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