沖縄県 A 島在宅高齢者の補完・代替療法としての自己治療の実施と健康状態,および他の社会的健康要因との関連
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概要
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目的 本研究は,補完・代替療法における家庭内の自己治療の実施状況を調査し,その実施と健康状態,およびその他の社会的健康要因との関連を明らかにするとともに,自己治療の継続的実施の予測因子を検証することである。<br/>対象と方法 対象は自己治療を現在も実施している可能性が高い環境(孤島で診療所以外の医療サービスが充実していない等)にある在宅高齢者243人である。郵送配布,直接回収による質問紙法の調査を2001年から2002年にかけて実施した。質問項目は年齢,世帯収入等の属性,主観的健康観や18種類の疾病の有無,IADL,社会関係,生活習慣などである。自己治療は予備調査から 3 種類を選択し,それぞれの実施状況を質問した。<br/>結果 何れかの自己治療を実施した経験がある者は65%で,男性の実施経験者(50.8%)に比較して女性の実施経験者(71.9%)が有意に高かった(P<0.05)。実施経験者を「現在も自己治療を実施している群」と「現在は実施していない群」に分けて比較分析すると,高血圧を治療中の者,関節炎・リウマチを治療中の者は,治療中でない者に比べて有意に現在も自己治療を実施していた(それぞれ P<0.05,P<0.01)。その一方で,過去 1 年間に他者に対して看病の提供サポートを行った者の現在も自己治療を実施している率は,サポートを行わなかった者に比べて有意に高かった(P<0.05)。ロジスティック回帰分析からも健康によい生活習慣のある人は,ない人に比べて,また他者への提供サポート経験がある人は,ない人に比べて現在の自己治療実施率が有意に高いことが明らかになった。「鍼灸を現在も実施している群」と「実施していない群」の分析においても,ほぼ同様の結果が得られた。<br/>考察 不健康な健康状態に対してだけではなく,健康に良い生活習慣の実施や他者への提供サポートが,自己治療の現在の実施と有意に関連していたことは,自己治療が疾病の補完・代替的治療を目的とするだけではなく,地域における健康増進,疾病予防的な行為や習慣と深く関わりながら実施されている状況であることが示唆された。
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