地域住民における受動喫煙の現状
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 健康づくり計画策定のために30歳以上の住民全体を対象として実施された調査成績,ならびに基本健康診査受診者に行った尿中コチニン検査などの成績に基づき,地域における環境中タバコ煙(ETS)曝露の現状を把握すること。<br/>方法 大分県 M 町において,住民基本台帳に基づく30歳以上3,108人の内(平成14年11月 1 日現在),入院中などを除く2,870人を対象に同町における健康づくり計画策定のためのアンケート調査が実施された(実施人数:2,695人,有効回答率=93.9%)。その中から,受動喫煙の状況に関して,「家庭や職場などにおいて,この 1 週間に他人のたばこの煙を吸う機会がありましたか?」などの問から地域での受動喫煙の現状を把握した。さらに,同町における平成15年 4 月に実施した基本健康診査受診者(1,005人)に対し,受動喫煙に関する自記式アンケートと,現在非喫煙者841人に対して酵素免疫測定法による尿中コチニンの測定を実施した。なお,尿中コチニン値は尿中クレアチニン値で除し,ETS 曝露の客観的指標とした。<br/>成績 同町における30歳以上の現在喫煙者の割合は,男性44.5%,女性6.5%であった。一方,健診受診者のそれは男性32.4%,女性3.7%と住民全体の喫煙率よりも低かった。住民全体の調査から,現在非喫煙者の男性12.6%,女性22.5%が自宅や職場などにおいて ETS 曝露が「ほとんど毎日」と回答した。「時々あった」を加えると,男性44.7%,女性42.8%であった。また,健診受診者を対象にした調査において,いずれかの場所において 1 時間以上の ETS 曝露が「ほとんど毎日」,あるいは「時々あった」と回答した者は,現在非喫煙者の男性の21.4%,女性の29.1%であった。このような ETS 曝露の有無別の 2 群間における尿中コチニン・クレアチニン比は,男性では有意な違いを認めなかったが,女性では明らかに ETS 曝露「あり」の群で高値を示した。<br/>結論 地域住民における受動喫煙の現状を示した。とりわけ,女性の喫煙率は低いにもかかわらず,ETS 曝露の割合は男性と同等かそれ以上であった。女性の ETS 曝露の場所は多くが家庭であり,家庭での分煙の取り組みはこれからの重要な課題になると思われた。
- 日本公衆衛生学会の論文
日本公衆衛生学会 | 論文
- 心理的健康の維持・増進のための望ましい生活習慣についての疫学研究
- 脳卒中予防対策地域における脳卒中発生状況と重症度の推移に関する疫学的研究
- 健康づくりのための運動指針2006の認知状況と他の健康づくり施策の認知および人口統計学的変数との関連
- 在宅生活をしている統合失調症患者のWHOQOL-26尺度に影響を与える要因の検討
- 肥満児の体力と保健指導プログラムにおける運動療法の効果