帯状疱疹の臨床・病理学的研究(第2編)―帯状疱疹皮疹部の病期からみた真皮浅層病変の観察―
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概要
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帯状疱疹皮疹部生検組織(22症例,26検体)を皮疹の性状に従って,紅斑,水疱,膿疱,潰瘍の4病期に分け,真皮浅層病変,ことに血管病変の推移につき病理組織学的に検討した.また,水疱期の3例について,真皮浅層における水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus,VZV)の波及を電顕的に検索した.(1)紅斑期には真皮浅層の小血管周囲に小円形細胞浸潤がみられるのみであったが,水疱期には浅層結合織,血管内皮に表皮Ballooning cell類似の腫大細胞を認め,ことに汎発例では血管内皮の著しい腫大,赤血球,白血球の血管外遊出がみられた.また,内皮の腫大に引き続いて血管周囲に好中球浸潤がみられた.膿疱・潰瘍期には細胞浸潤は多数の核破片を含み,血管壁の変性・壊死,血栓形成なども認められ,Leucocytoclastic vasuculitisに一致する所見を得た.以上から,本症ではVZV感染による血管内皮の腫大がLeucocytoclastic vasculitisの引きがねになっていると考えられた.また,血管炎に伴う血栓形成が潰瘍の発生に寄与すると思われた.(2)水疱期の電顕的観察では,真皮浅層のマクロファージ,小血管の周皮細胞,内皮細胞にウイルス粒子を認めた.マクロファージでは細胞質の空胞内にいろいろな形態の粒子を認めることが多いが,細胞によっては核,細胞質,細胞表面に多数の粒子がみられた.前者ではマクロファージ内でのVZVの変性・破壊を,後者ではVZVの増殖を示すと考えられた.血管内皮細胞でもVZVの増殖,細胞の変性がみられたが,ことに汎発例では,著しく腫大,変性した内皮様の細胞に多数のウイルス粒子を認めた.以上から血管内皮におけるVZVの増殖がウイルス血症,汎発化に関与すると考えられた.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文