皮膚生理機能におよぼす気温,湿度,季節,および洗顔の影響
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概要
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温度,湿度,部位,および季節の違いによる人の顔面皮膚生理機能の変化を測定する目的で,皮表脂質量(皮脂量と略す),角質水分量(水分量と略す),皮膚表面温度(皮表温度と略す),および皮膚表面pH値(PH値と略す)を,恒温恒湿室内(風速0.15m/秒以下)で座位安静1時間後に測定した.同時に,これらの石けん洗顔(30℃の温水使用)(洗顔と略す)による影響も調べた.室内温度(室温と略す)は17~29℃で,室内相対湿度(湿度と略す)は40~80%の間を変化させて測定した.1)皮脂量は,室温,湿度,季節,および部位の違いによる変動を示さなかった.皮脂量が,洗顔後に前の値まで回復するのに要した時間(回復時間と略す)は,秋の前額部を除き室温の上昇とともに短縮された.秋が冬より,また,頬部が前額部より洗顔後の皮脂量は早く回復する傾向を示した.湿度の変化は,皮脂量の回復時間に影響を与えなかった.2)水分量は,室温上昇とともに増加し,室温22℃以上で著明に増加する傾向を示した.水分量の季節別比較では,室温17℃および22℃において頬部では秋が冬より高値であったが,前額部に季節差はみられなかった.水分量の部位別比較では,冬は前額部が頬部より高値であったが,秋に部位差はみられなかった.湿度40%に比し湿度80%における水分量が有意に高値であった.水分量の回復時間は,室温,湿度,季節,および部位に関係なく5分以内であった.3)皮表温度は,室温の上昇につれて高値を示した.しかし,秋測定した室温25℃と29℃との皮表温度間では,統計的に有意な上昇はみられなかった.皮表温度の季節別比較では,冬が秋より0.9~1.4℃高値であった.室温17℃および22℃における皮表温度の部位別比較では,秋は前額部が頬部より高値であったが,冬に部位差はみられなかった.湿度は皮表温度に影響を与えなかった.洗顔直後の皮表温度の下降温度幅は,前額部より頬部が,また,冬より秋が大きかった.皮表温度の回復時間は5~15分で,室温の上昇とともに短くなり,前額部より頬部が,また,秋より冬が短い傾向を示した.洗顔に関係なく,皮表温度は外気温より測定時室温が低下している場合に室温の変化に影響を受けやすく,とくにそれは前額部より頬部に著明であった.湿度は皮表温度の回復時間に影響を与えなかった.4)PH値は,室温,湿度,および季節の影響を受けなかった.秋は室温22℃を除き洗顔後30~135分で回復したが,冬は各室温ともに洗顔後120分以内にPH値は回復しなかった.また,湿度40%ではPH値は洗顔後150分までに回復しなかった.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文
著者
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広瀬 統
日本メナード化粧品 総研
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小島 肇
日本メナード化粧品株式会社生化学研究所
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大野 盛秀
東海逓信病院皮膚科
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飯田 宏
日本メナード化粧品株式会社生化学研究所
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長谷川 和富
日本メナード化粧品株式会社生化学研究所
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