健康成人男性の赤外サーモグラフィー所見
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概要
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1.健康成人男性172名について,室温26.7±0.6℃,湿度60%以下,風速約0.05m/secの恒温室内で肘,膝以下を露出せしめ,20分間以上室温に順応させたのち,顔面,四肢の赤外サーモグラフィーを行いその所見をまとめた.2.皮膚温の平均値は,前額部35.3±0.4℃,前腕部33.4±0.8℃,下腿部33.0±0.7℃で左右で差はなく,分布はほぼ正規性であった.これに対し鼻尖部温,指尖部温は高温に分布が偏っていた.また,趾尖部温の分布は特性を示さはかった.3.顔面サーモグラムのパターンは,高温型が80%以上を占め,頬部,鼻尖部が低温所見を示すものはそれぞれ14.5%,4.7%であった.頬部と耳部,鼻尖部と鼻根部の低温所見は相互に関連性がみられた.顔面は大部分が左右対称性であり,非対称は0.6%にすぎなかった.4.上肢サーモグラムは,指尖部が低温ないし欠損所見を示すものが約10%で,左右非対称は3.5%にみられた.5.下肢サーモグラムは,趾の全部または部分欠損所見を示すものが約50%で,そのうちでは第V趾の欠損の頻度が最も高く,左右非対称は11.6%にみられた.6.高温斑は上肢の18%,下肢の23%にみとめられ,ほぼ左右対称性で,その有無に関しては上下肢間で相関がみられた.また,冷え症の傾向を示すものは四肢の欠損所見の頻度が有意に高く,発汗中のサーモグラムでは,部分的低温斑すなわち,顔面のヒゲ現象や手指背部のマダラ現象がみられた.7.前額―鼻尖部,前腕―指尖部,下腿―趾尖部の温度勾配は相互に関連しており,前額―鼻尖部の温度勾配は段階的な分布を示した.8.サーモグラムパターンにはある程度季節的因子が関与し,その影響は顔面で最も少なく,上肢ついで下肢の順に多い.また,平均気温が同じでも気温の下降期(秋季)の方が上昇期(春季)に比べて低温所見の頻度が高かった.9.1年間,同一人で反復施行したサーモグラムにおいて,顔面,上肢では季節による影響はみられなかったが,下肢では著明な低温所見を示す場合があり,季節的因子以外の生活環境因子も関与すると推測された.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文