マウスmelanoma転移に果たすlysosome酵素の役割―特に腫瘍と周辺組織およびprotease inhibitorとの相互作用について―
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概要
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マウスmelanomaの低肺転移株であるB16-F1 melanoma細胞(F1)と高肺転移株であるB16-F10 melanoma細胞(F10)を用いて,これら細胞の転移能と各種lysosome酵素活性の相関関係を比較検討した.まず各々のin vitroでの培養細胞を材料として,lysosome酵素であるcathepsin B,hemoglobin(Hb)-hydrolase,β-glucuronidase及びacid phosphatase活性を各々測定し比較検討を試みた.その結果,①培養F1細胞と培養F10細胞間にはいずれの酵素活性とも有意な差は認められなかった.次いで,②これらF1,F10培養細胞をマウスに投与することによって肺に形成された腫瘍塊での比較では,F10 melanoma腫瘍塊において,cathepsin B,Hb-hydrolase及びβ-glucuronidase活性共にF1 melanoma腫瘍塊よりも有意に高い値が検出された.更に,③転移した腫瘍の周辺肺組織における酵素活性を比較したところ,F10腫瘍の周辺肺組織においては,cathepsin B及びHb-hydrolase活性がF1腫瘍のそれよりも有意に高い値が示された.一方,④培養したF1及びF10 melanoma細胞に,cathepsin Bのin vitroでのinhibitorであるE-64,あるいはHb-hydrolaseのinhibitorであるpepstatinを添加培養したところ,各々に対応する酵素の活性はそれぞれ理論通り阻害された.しかしながら,⑤同様に,cathepsin Bのin vitroでのinhibitorであるleupeptin,antipain,chymostatinなどを添加した系では,cathepsin B及びHb-hydrolase活性は阻害されず,逆に上昇した.更に,⑥間質成分であるcollagenまたはfibrinなどの添加培養によってもcathepsin B及びHb-hydrolase活性が上昇し,特に,fibrinによるHb-hydrolase活性の上昇作用は顕著であった.以上のことから,melanoma細胞の局所での増殖,浸潤,転移性,特に,転移能には,cathepsin B,Hb-hydrolase及びβ-glucuronidaseなどのlysosome酵素の活性が重要な役割を演じている可能性が明らかにされた.更に,肺転移したマウスB16 melanoma細胞は,周辺組織特質であるcollagenやfibrin,あるいはプロテアーゼのbiological inhibitorなどの分子成分と対応しつつ腫瘍細胞自身の酵素活性を微妙に変化させるだけでなく,周辺組織の酵素活性をも変化させつつ局所侵襲性を果たしているものと考えられた.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文
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