開心術後 Warfarin と PPI の相互作用による合併症回避のためのリスクマネージメントを目標としたゲノム解析
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概要
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[背景・目的]開心術後早期のプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与は,ストレス性消化管合併症の予防に有効であるが,PPIは抗凝固療法として用いるワルファリン(WF)と併用した場合,チトクロームP-450(CYP)2C19による代謝過程を共有するため,INR(International Normalizing Ratio)が急上昇し出血合併症のリスクとなる.[対象]CYP2C19の遺伝子亜型は代謝の早いEM(Extensive Metabolizer)型,遅いPM(Poor Metabolizer)型,中間のIM(Intermediate Metabolizer)型の3種が存在するが,WF,PPIの競合作用における遺伝子の関与については不明である.[結果]われわれは,PPIの種類とCYP2C19遺伝子亜型による薬剤相互作用への影響に関して研究を行った.PPIはその種類によってOmeprazole,Lansoprazole,Rabeprazoleの順にCYP2C19に対する代謝依存度が強く,Rabeprazoleにおいては主に非酵素的に代謝される.日本人では5人に1人がCYP2C19におけるPMであるとされ,他民族に比べ出血合併症をきたしやすいといわれている.今回,開心術後のWarfarinとPPIの併用について,前向き観察研究にてその競合作用とCYP2C19の遺伝子型について検討を行った.78例の患者から遺伝子解析を行い,VKORC1(Vitamin K epoxide reductase complex subunit 1)遺伝子型がT/T変異,CYP2C9遺伝子型が *1/*1で統一されたRabeprazole内服群(RB群)30例,Lansoprazole内服群(LP群)30例で比較検討を行った.[結果]Lansoprazole+Warfarin併用症例では,TTR(Time in Therapeutic Range)の低下が有意に見られ,その原因として有意差はなかったもののCYP2C19遺伝子型が関与している可能性が考えられた.また出血リスクとして年齢があげられたことより,とくに今後高齢化社会においては,Warfarinと併用するPPIとしてRabeprazoleが最も安全で有効であると考えられた.
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