慢性血液透析に導入されたHIV陽性患者9症例の臨床経過と生命予後
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【背景】HIV患者の生命予後は抗HIV薬の多剤併用療法 (HAART) の登場により劇的に改善した. しかし, 長期生存例の増加に伴い, HIV陽性慢性透析患者の出現が新たな社会問題となっている. 本邦には, 慢性血液透析 (HD) に導入されたHIV患者の臨床経過および生命予後を検討した報告はない. 【対象と方法】2004年4月から2013年3月までに, 当院で慢性HDに導入され, サテライト透析施設で外来通院治療が可能であったHIV患者9例を対象とし, 導入後の臨床病像, HIV感染コントロール状態, 主な新規合併症, 入院回数, 延べ入院日数などを2013年9月に電子診療録により調査した. 生命予後をKaplan-Meier曲線にて解析し, 同時期に慢性HDに導入された非HIV患者の中で, 年齢, 性別, 糖尿病合併率をマッチさせた19例を対照として比較した. 【結果】慢性HD導入時の平均年齢は53.0±8.8歳, 観察期間中央値は4.6年 (範囲3.5~8.9年) であった. 全例がHAART治療を継続し, 5年累積生存率は, 88.9%であり, 対照群の79.9%とは有意差を認めなかった. 導入後調査時のHIV感染コントロール状態は良好だった. 新規合併症は心疾患5例 (狭心症+心不全2例, 急性心筋梗塞1例, 狭心症1例, 心不全1例), 細菌性肺炎3例, 中咽頭癌1例を6例の患者に認めた. 導入後の入院回数は平均2.2±1.4回, 延べ入院日数は平均58.0±51.8日だった. 針刺し事故, 他者へのHIV感染事例, 風評被害はなかった. 【結語】HD導入後もHIV感染コントロールの悪化はなく, 生命予後は良好である. 心疾患の新規発症例が多いが, 多くは独歩で外来通院透析を継続できている.
著者
-
菅沼 明彦
がん・感染症センター都立駒込病院感染症科
-
今村 顕史
がん・感染症センター都立駒込病院 感染症科
-
味澤 篤
がん・感染症センター都立駒込病院感染症科
-
安藤 稔
がん・感染症センター都立駒込病院腎臓内科
-
原 正樹
がん・感染症センター都立駒込病院腎臓内科
-
柳澤 如樹
がん・感染症センター都立駒込病院感染症科
-
能木場 宏彦
がん・感染症センター都立駒込病院腎臓内科
-
森戸 卓
がん・感染症センター都立駒込病院腎臓内科
-
岩佐 悠子
がん・感染症センター都立駒込病院腎臓内科
関連論文
- ヒトヒフバエによる皮膚ハエ幼虫症の小児例
- わが国におけるHIV検査戦略
- 感染症指定医療機関における結核患者管理
- 慢性血液透析に導入されたHIV陽性患者9症例の臨床経過と生命予後
- HIV抗体, HIV-1 p24抗原同時検出試薬の性能評価