セメント固化灰中に含まれる多環芳香族炭化水素類の溶出機構
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概要
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最終処分場に埋め立てられる焼却灰の安全性を評価する試験法として、わが国では環告13号法が用いられている。しかしながら本法は重金属を主な対象とした試験法であり、多環芳香族炭化水素類やダイオキシン類の影響評価には必ずしも適切で無い可能性がある。土壌や底質を対象とした既存の研究から、これら疎水性有機化合物の溶出は非常に長期にわたり、その溶出挙動は短時間の溶出試験では評価しがたいと考えられた。そこで本研究では焼却飛灰中の多環芳香族炭化水素類の溶出特性を検討し、その安全性を評価しうる試験法を確立することを目的とした。ミニカラム試験の結果からセメント固化灰中のPAHsの溶出は初期の速やかな溶出とそれに続く緩やかな溶出に分けられることが確認された。固化時に用いられるキレート処理剤などの有機物の溶出量と初期溶出量に相関があることが明らかとなった。またモデルによる推算結果が実験値とよく一致したことから、後半の緩やかな溶出はPAHsのセメント固化灰内部での拡散速度に依存しており、この内部拡散速度が長期的な溶出速度を支配する重要な因子であることが明らかとなった。また未破砕のセメント固化灰を用いた長期のカラム試験結果は短時間のミニカラム試験結果に基づく溶出モデルのパラメータを用いることで推算可能であった。この推算手法では初期溶出においては実測値とずれが生じるものの、後半の緩やかな溶出は極めてよく一致しており、長期的な溶出ポテンシャルの評価に耐えうると考えられた。したがって本論文で提示したミニカラム試験と数理モデルを用いた長期的溶出ポテンシャルの評価法は環境省告示13号法試験よりも高精度であり、実際の試験期間よりも10倍程度長い期間の溶出挙動を正確に予測可能であることが示された。
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