介護保険制度導入前後における在宅サービス利用の変化
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概要
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目的 世界の高齢化に伴い,措置制度から社会保険方式に転換をした日本の公的介護保険制度は,高齢者介護施策の先例として世界から注目されている。本研究では,介護保険制度導入前の措置制度下に在宅サービスを利用していた者(以下,旧サービス利用者)が,導入後,どの程度介護保険サービスの利用に至ったのかを検証することを目的とし,介護保険サービス利用に至る各手続きにも着目し分析した。<br/>方法 日本大学総合学術情報センターの「健康と生活に関する調査」のパネルデータのうち,導入前調査(1999年11月と2000年 3 月)と導入後調査(2001年11月と12月)を用いた。両調査に回答した3,992人のうち,65歳以上の旧サービス利用者416人を分析対象とした。<br/> 介護保険サービス利用の各手続きのうち,要支援•要介護認定の申請(以下,申請),要支援•要介護の認定(以下,要介護等認定),介護保険サービス事業者との介護保険サービス利用の契約(以下,契約)の 3 つを従属変数とした。独立変数は,個人属性と旧サービス利用状況とし,申請の有無との関連は,ロジスティック回帰分析を用いた。<br/>結果 介護保険制度導入後,介護保険サービスを利用していた者は133人(32.0%)であった。介護保険サービス利用の各手続きでは,旧サービス利用者の45.5%が申請をし,このうち85.7%が要介護等認定を受けていた。さらに,要介護等認定をうけた者の88.7%が契約を行っていた。また,申請ありと有意に正の関連をしていたのは,等価所得が125万円未満(OR:95%CI 2.72:1.30–5.69),ショートステイ利用あり(3.29:1.16–9.35),疾患あり(8.34:1.86–37.46),手段的日常生活活動(Instrumental Activities of Daily Living: IADL)非自立レベル(11.21:5.22–24.07)であった。一方,有意な負の関連があったのは,機能訓練事業利用あり(0.38:0.17–0.82)であった。<br/>結論 旧サービス利用者のうち,申請をした者は約半数であり,申請した者には,疾患を有する者や IADL が自立していない者がより多かった。このことから,措置制度下では要支援•要介護状態でなかった者が多く含まれていた可能性がある。一方で,低所得者が申請を控えた可能性は低いことが示された。
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