男性家族介護者の心身の主観的健康特性
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概要
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目的 要介護者人口の増加と社会構造の変化により,介護の役割を担う男性は年々増加傾向にあり,これからの家族介護者の支援については性差を踏まえた上での検討が大切だと思われる。本研究は,男性の非介護者との比較から,男性家族介護者の心身の健康についての特性を明らかにすることを目的としている。<br/>方法 対象は,在宅で要介護 3 相当以上もしくは要介護 3 未満でも認知症の者を介護している男性家族介護者52人(介護者群)で,平均年齢と標準偏差は69.3±10.9歳であった。調査は,家族介護者の自宅を 2 人の調査員が訪問して行った。対照群は,対象の性と10歳階級ごとの年齢を 1:1 対応でマッチングさせた K 市の一般住民健診を受診した52人で,平均年齢は,69.2±11.1歳であった。調査期間は,2005年12月から2007年 4 月であった。使用した質問項目は,QOL,心理的ストレス関連項目,コーピング,生活習慣等を自記式質問紙にて調査した。<br/>結果 要介護者平均年齢は75.7±9.5歳であった。居住世帯は,要介護者との 2 人暮らしが28人(53.8%)と半数以上を占め,老老介護の実態が示唆された。健康関連 QOL(SF–8)からは身体的健康領域では,「全体的健康感」と「体の痛み」で介護者群の得点が有意に低く,介護者群は「体の痛み」を自覚しながら生活している傾向があることが明らかとなった。また,精神的健康領域では「心の健康」及び精神的健康サマリースコアの得点が有意に低かった。さらにストレス関連項目においても,介護者群は対照群に比べストレス知覚者が多く精神的心理的に問題を抱えていることが伺われた。生活習慣においては睡眠の量,質ともに対象群に比べ介護者群の方が良くないことが示され,コーピングは「回避的思考」と「気晴らし」の 2 項目で介護者群の得点が有意に低く,回避型のコーピングをとらない傾向が示された。<br/>結論 男性介護者は心身の健康に対して主観的な健康感が低く,睡眠やストレス知覚についても問題を抱えながら介護のある生活を送っていることがわかった。また,回避型のコーピングをとらない傾向にあることが示され,包括的な支援の必要性が示唆された。
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