女性医師の就労に影響を与える因子の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 わが国の医師不足は深刻で女性医師の社会的活用が急務である。ところが女性医師は結婚,出産で離職する割合が高い。欧米の研究では女性医師の就労モチベーションは,性差による就労機会格差と関連のあることが示唆されている。本研究では,性差に伴う男女就労機会格差に対する認識と就労上の不利益な経験について男女間で差があるか検討を行い,さらに女性医師の就労に影響を与える因子について検討する。<br/>方法 平成21年 6 月,某私立大学医学部同窓会会員1,346人に自記式質問票を郵送した。男女就労機会格差については,「医学部で女性は昇進しにくい」を筆頭に14問を作成し,因子分析を用いて男女就労機会格差変数を作成した。就労上の不利益な経験については,「性別のために有給ポスト獲得•昇進人事•終身雇用の機会を得られなかったと感じる経験はありましたか」と尋ねた。就労形態(週40時間以上をフルタイム,それ以下をパートタイムと定義)をアウトカムとし,専門医取得の有無,性差に伴う就労上の不利益な体験,男女就労機会格差,子供の有無,世帯収入などの影響をロジスティック分析にて検討した。<br/>結果 回収数は男性452人(平均48歳),女性224人(平均43歳),回収率はそれぞれ44%と71%であった。性差に伴う就労上の不利益な経験について「あった」と回答した医師は女性で40人(18%),男性では15人(3%)であった(P<0.001)。就労機会格差の14項目は 1 項目を除いてすべての項目で,男性よりも女性においてその点数が高かった。女性医師における就労形態はフルタイムが66%,パートタイムが32%,無職および休職は 2%であった。女性医師のみを対象としたロジスティック分析では,フルタイムに比して,パートタイムで婚姻率が高く(P<0.001),就労格差の総得点が高かった(trend P=0.034)。またパートタイムに比して,フルタイムは専門医を取得している医師が多かった(P=0.048)。子どもの有無,世帯収入は女性医師の就労に有意な影響を与えていなかった。<br/>結論 性差による就労上の不利益な経験は女性医師に多く,就労機会格差は女性医師で強く認識されていた。女性医師の就労に影響を与える因子として,従前より指摘のあった子供の影響よりも専門医資格取得や就労機会格差に対する認識がより深く関連した。
- 日本公衆衛生学会の論文
日本公衆衛生学会 | 論文
- 心理的健康の維持・増進のための望ましい生活習慣についての疫学研究
- 脳卒中予防対策地域における脳卒中発生状況と重症度の推移に関する疫学的研究
- 健康づくりのための運動指針2006の認知状況と他の健康づくり施策の認知および人口統計学的変数との関連
- 在宅生活をしている統合失調症患者のWHOQOL-26尺度に影響を与える要因の検討
- 肥満児の体力と保健指導プログラムにおける運動療法の効果