肥満を含む循環器リスクファクターの重積と脳卒中発症リスクの検討 日本動脈硬化縦断研究(JALS)0 次統合研究
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概要
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目的 前向きコホート研究の個票ベースのメタアナリシスにより,メタボリックシンドロームを構成するリスク因子の重積と脳卒中発症の関連に肥満の有無が影響を与えているかを明らかにする。<br/>方法 1985年以降にベースライン時調査が行われた合計10コホート19,173人を対象とした。メタボリックシンドロームを構成するリスク因子を国内の 8 学会合同の診断基準を参考に定義し,リスク因子(血圧高値,脂質異常,高血糖)の保有数と BMI25(kg/m2)以上で定義した肥満の有無の組み合わせによってリスクの階層化を行った。Poisson 回帰モデルを用いて脳卒中発症の調整済みハザード比と人口寄与割合を群ごとに算出した。<br/>結果 平均7.1年の追跡期間中,374件の脳卒中の新規発症が観察された。肥満の有無に関わらず,最も保有割合が高いリスク因子は血圧高値であった。リスク因子 0 個の非肥満群を基準とした脳卒中発症ハザード比は,リスク 1 個の非肥満群,リスク 2 個以上の非肥満群でそれぞれ,2.48(95%信頼区間:1.75–3.5),3.75 (2.58–5.45),リスク 1 個以下の肥満群,リスク 2 個以上の肥満群でそれぞれ2.38 (1.58–3.59),3.26 (2.11–5.02)であり,いずれも有意なリスク増加が認められた。脳卒中発症に対する人口寄与割合は,リスク 1 個の非肥満群が23.3%で最も高く,次いでリスク 2 個以上の非肥満群であった。リスク 1 個以下の肥満群では8.1%,リスク 2 個以上の肥満群では8.0%であった。病型別の検討でも同様の傾向が認められた。<br/>結論 リスク因子の重複は肥満の有無によらず脳卒中発症リスクを上昇させ,脳卒中罹患者数の増加に対する寄与は非肥満者でのリスク因子保有の方が肥満者より大きいと考えられた。以上より,わが国においては内臓型肥満を前提とするメタボリックシンドローム対策のみでは十分ではなく,個々のリスク因子に注目した脳卒中予防対策が依然として重要であることが示唆された。
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