都市部高齢者の閉じこもりと生活空間要因との関連
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概要
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目的 都市部高齢者を対象に,身体的要因,心理的要因,社会的要因,生活空間要因を加味したタイプ別閉じこもりへの関連要因を検討する。<br/>方法 東京都世田谷区に2009年 4 月 1 日時点で在住し,年齢が65歳以上の高齢者149,991人を対象に,郵送による自記式質問紙調査を2009年 7 月~9 月の期間に実施した。調査項目は,閉じこもりに関する変数(外出頻度等),基本属性,身体的要因(疾患,麻痺等),心理的要因(うつ,認知機能等),社会的要因(地域活動参加状況等),そして生活空間要因(住環境,空間利用)であった。分析は,閉じこもりをタイプ 1(移動能力が低く閉じこもっている状態),およびタイプ 2(移動能力が高いにも関わらず閉じこもっている状態)に分類した上で,これらを従属変数とし,各要因を独立変数に投入したロジスティック回帰分析を行った。<br/>結果 配布した149,991票のうち,109,889票が回収され,このうち103,684票を有効回答とした(有効回答率69.1%)。タイプ 1 は分析対象者全体の3.7%,タイプ 2 は4.5%であり,両タイプとも男女ともに年齢が高い群ほど,閉じこもり高齢者の割合が高かった。タイプ別閉じこもりへの関連要因を検討したところ,全体の傾向として,タイプ 1 には主に身体的要因と社会的要因とが関連し,タイプ 2 には身体的,心理的,社会的要因が包括的に関連していた。また,生活空間要因では,住居形態等を含む住環境がタイプ 2 に関連し,日中主に過ごす場所,最近 1 か月に行った最も遠い場所を含む空間利用が両タイプの閉じこもりに関連していた。<br/>結論 高齢者の閉じこもり予防•改善施策には,閉じこもりのタイプを考慮した上で身体的,心理的,社会的要因に対してアプローチすることに加え,現在の住環境をアセスメントし,日常生活空間を十分に活用できるようにすることが糸口となる可能性がある。住宅政策や交通政策等を組み合わせた今後の介護予防施策が望まれる。
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