乳児から小学生の子どもをもつ母親の虐待認識についての検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 本研究では,子どもを虐待していると思うことがあるとの認識を虐待認識として捉え,4 か月児健診を受診し,かつ第 1 子が小学生までの子どもをもつ母親を対象に,虐待認識の実態とその関連要因について明らかにすることにより,虐待予防対策を検討するための基礎的資料とすることを目的とした。<br/>方法 対象者は,西宮市の 4 か月児健診を受診した母親のうち,無作為抽出した3,000人の母親に自記式質問紙を郵送し,1,725人(回収率57.5%)から回答を得た。このうち,第 1 子が12歳以下である母親1,471人を本研究の対象者とした。<br/> 本研究では,子どもを虐待しているのではないかと思うことがあるか否かを二件法で問い,その内容について調査した。分析に使用したデータは,子どもの年齢,子どもの数,母親の体調,ストレス解消法の有無,自由時間の有無,睡眠状態,育児協力者の有無,母親の不安状態,抑うつ状態,可愛がりにくい子どもがいるか否か等である。<br/>結果 調査時点で,虐待認識のある母親は333人(全体の22.6%)であった。虐待認識の内容は,各年齢を通じて感情的な言葉が最も多く,続いて叩くなどの行為が挙げられていた。母親の虐待認識は子どもの年齢階級で差異が認められ,1 歳以下の子どもをもつ母親では虐待認識のある者の割合が13.8%と,他の年齢の子どもをもつ母親よりも有意(P<0.001)に低かった。ロジスティック回帰分析の結果,母親の虐待認識には可愛がりにくい子どもがいること,子どもが 2 人以上いること,STAI における特性不安が高不安であること,母親の体調が悪いもしくは治療中であること,および障がい児をかかえていることと関連が認められた。可愛がりにくい子どもがいる理由で最も多く挙げられていたものは,下の子どもがいる場合の上の子どもへの対応の難しさであった。<br/>結論 本研究結果から,対象者全体の22.6%の母親に虐待認識が認められた。これらの母親は,子どもに対して感情的な言葉,叩くなどの行為を認知していることが確認された。また,母親の虐待認識は,子どもの年齢と関連しており,2 歳以上の子どもをもつ母親で有意に多くなっていた。さらに,子どもが複数いる母親に,虐待認識のある者が多いことが示され,初妊産婦が優先されやすい現在の母子保健サービスのあり方や優先順位を虐待予防の視点から再度検討する必要性が示唆された。
- 日本公衆衛生学会の論文
日本公衆衛生学会 | 論文
- 心理的健康の維持・増進のための望ましい生活習慣についての疫学研究
- 脳卒中予防対策地域における脳卒中発生状況と重症度の推移に関する疫学的研究
- 健康づくりのための運動指針2006の認知状況と他の健康づくり施策の認知および人口統計学的変数との関連
- 在宅生活をしている統合失調症患者のWHOQOL-26尺度に影響を与える要因の検討
- 肥満児の体力と保健指導プログラムにおける運動療法の効果