うつ状態と介護保険要支援・要介護認定リスクとの関連 鶴ヶ谷プロジェクト
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概要
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目的 地域高齢者におけるうつ状態の程度とその後の介護保険の要支援•要介護認定リスクとの関連をコホート研究により検討すること,さらにその関連に男女差があるかを検討すること。<br/>方法 仙台市宮城野区鶴ヶ谷地区の70歳以上住民全員(2,925人)に対し,高齢者総合機能評価「寝たきり予防健診」を平成15年に行った。受診者(958人)のうち,研究利用への同意が得られ介護保険認定非該当であった者841人を解析対象とした。うつ状態は30項目の Geriatric Depression Scale (GDS)で評価した。抗うつ薬内服または GDS14点以上(中等度~重度うつ群),10-13点(軽度うつ群),9 点以下(健常)の 3 群に分類し要支援•要介護認定リスクを Cox 比例ハザードモデルにより算出した。<br/>結果 4 年間の追跡調査で151人が要支援•要介護認定を受け,46人が死亡した。うつ状態は特に男性において要支援•要介護認定リスクと関連していた。男性では,健常群と比較した要支援•要介護認定の年齢補正ハザード比は,軽度うつ群で1.77(95%信頼区間(CI):0.91-3.48),中等度~重度うつ群で2.26(1.11-4.64)と,うつ状態の程度とともに有意に増加した(傾向性の P 値=0.023)。これは,疾患既往歴,ソーシャルサポートの有無,喫煙,認知機能などの影響を補正しても変わらなかった(多変量補正ハザード比;軽度うつ群:1.31(95%CI:0.65-2.65),中等度~重度うつ群:2.19(1.06-4.54),傾向性の P=0.034)。一方,女性では,うつ状態と要支援•要介護認定リスクとの間に有意な関連は認められなかった。また,うつ状態と死亡リスクには男女ともに有意な関連は認められなかった。<br/>結論 うつ状態と要支援•要介護認定リスクは,男性でのみ有意な関連が認められた。それは,ベースラインの既往歴,心身機能,社会的要因,生活習慣を補正してもなお認められた。うつ状態の要支援•要介護認定発生への影響は男女で異なる可能性が示唆された。地域高齢者のうつ対策が,生活の質の向上のみでなく,特に男性高齢者において,介護予防に重要であることが示された。
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