ベイズ推定の医療費地域差指数への適用
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概要
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目的 古くから医療費の地域格差の問題に関するさまざまな議論が行われている。わが国において市町村ごとの医療費の格差を論じる際,国民健康保険における地域差指数という指標が用いられる。しかしこの指標は観測度数と期待度数の比の形の指標であり,地域の死亡リスクを表す際に用いられる標準化死亡比と同様,人口の少ない地域ではその変動が大きく,不安定な指標となる。そこでその問題点を解決することを目的に,死亡リスクでの議論と同様,統計学的な視点からベイズ推定を用いた指標の検討を行う。<br/>方法 本研究では医療費に対数正規分布を仮定し,その上で従来の地域差指数の統計学的な位置づけを明らかにし,さらにそのフルベイズ推定量からベイズ地域差指数を導出した。実際に公開されている各市町村の年次データを用いて従来の地域差指数の値と提案するベイズ地域差指数の相対的な比較を行った。<br/>結果 医療費の分布として対数正規分布を仮定すれば,従来の地域差指数はその分布の中央値に基づく水準を表す指標の推定値であるという意味づけが可能となった。実データによる数値計算では,特に人口の少ない地域での従来の地域差指数が不安定であることがわかった。そこでベイズ推定を行うことで,その不安定さを解決できることが観察された。<br/>結論 提案するベイズ推定を行うことで全体として平滑化された安定した医療費水準の推定を行うことができた。この指標を用いることで,より適切な地域格差の議論を行うことができるようになると考えられる。
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