前期高齢女性の近隣他者との交流関係と健康関連 QOL との関連
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概要
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目的 高齢者の社会関係と健康認識との関係について探究するため,前期高齢女性の家族以外の身近な他者との交流関係と健康関連 QOL との関連について検討する。<br/>方法 大都市近郊のベッドタウン A 市(人口:18万人,高齢化率:14.9%)を調査地とし,無作為抽出された65歳から74歳までの女性1,000人に郵送による自己記入式質問紙調査を行った。有効回答の得られた602人のうち,日常生活が自立し,近隣他者と交流をもつ525人を分析の対象とした。調査には,DMCI 項目(Cronbach's α=0.85)と SF-36v2 日本語版(Cronbach's α=0.93)を用い,共分散構造分析にて解析した。「気遣い合い的日常交流」の 4 構成概念,および SF-36v2 を構成する身体的側面の健康認識と精神的側面の健康認識の関連を検討した。<br/>結果 最終的な採択モデル(GFI=0.930, RMSEA=0.045)における「気遣い合い的日常交流」の構成概念間の関係として,「日常的相互関心」と「共感的相互理解」をもつことによって「適度な距離感」が得られ,「適度な距離感」を保持することで「日常的相互関心」と「共感的相互理解」が継続でき,それらの相互行為を通じて「自己存在の確認」ができると考えられた。「気遣い合い的日常交流」の相互行為のうち,「共感的相互理解」から身体的および精神的側面の健康認識に向かう極弱い正の関連が確認された。しかし,交流の目的である「自己存在の確認」から身体および精神的側面の健康認識に向かう有意な関連は認められなかった。また,身体および精神的側面の健康認識の間には,非常に強い相関が示された。<br/>結論 前期高齢女性の近隣他者との交流関係と健康関連 QOL との間には,社会関係が身体や精神的な健康状態の認識を高める明らかな直接的関係は認められなかった。加齢による不可逆的変化を自覚している前期高齢女性にとって,近隣他者との交流関係は,身体や精神的な健康認識を改善するというよりも,むしろその認識の程度に関わらず,現状を共有し,積極的に今を生きることを助けている可能性が考えられた。高齢者の QOL の観点から,日常の社会的な側面に注目した主体的健康増進支援の有効性についてさらなる検討の必要性が示唆された。
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