帰国10年以上の中国帰国者1世およびその中国人配偶者の精神的健康とその関連要因
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概要
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目的 帰国10年以上の中国帰国者 1 世およびその中国人配偶者における精神的健康問題の実態とその関連要因を明らかにする。<br/>方法 関東在住の帰国10年以上(10~26年)の中国帰国者 1 世とその中国人配偶者99人(平均年齢63.9歳)を対象に質問紙調査を行った。対象者の精神的健康の測定には,精神的健康調査票(General Health Questionnaire) 12項目版(以下 GHQ12)を用い,関連要因として①人口学的特徴,②日本での社会参加状況,③セルフケア行動状況,④高次生活機能(老研式活動能力指標),⑤身体的健康(体力指標,健康度自己評価)を調査した。分析には,平均値の差の検定と χ2 検定,GHQ12を従属変数としたロジスティック回帰分析を用いた。<br/>成績 全体的に GHQ の得点が高く,精神的健康問題が疑われる対象者(GHQ12≧4 点)は 7 割ほどであった。とくに訴えの多かった症状は生きがいを感じない(74.7%),不幸せ感(72.7%),ストレス(59.6%),物事を決定できない(57.6%),憂うつ気分(56.6%),不眠(55.5%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,GHQ12≧4 点と有意な関連がみられた項目は,日本語によるコミュニケーションが全く不可能(OR: 5.48, 95%CI: 1.52-19.82),保健医療福祉情報の提供者がいない(OR: 5.25, 95%CI: 1.32-20.95),若い人に自分から話しかけることがない(OR: 3.51, 95%CI: 1.05-11.74),健康度自己評価が低い(OR: 15.49, 95%CI: 4.11-58.48)の 4 項目であった。<br/>結論 本研究に参加した帰国後10年以上の中国帰国者 1 世とその中国人配偶者は,精神的健康問題の頻度が高いことがうかがわれた。精神的健康度には,言語の障壁や保健医療福祉情報の提供者の有無,若年者とのコミュニケーションの有無,健康度自己評価が関連していた。以上より,中国帰国者 1 世およびその中国人配偶者への多側面の支援の必要性と緊急性が示唆された。
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