全国市町村健康づくり事業において住民ニーズの把握が事業に与える影響について
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概要
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目的 予防医学を中心とした基本戦略の柱である「健康日本21」は,計画策定の情報の共有化と目標管理・評価により,国民の意識改革と行動変容を促しており,さらに関連団体,行政,地域住民等の連携を重視している。多くの自治体では,独自の健康づくりへの取り組みを行っているが,その評価に関する問題点は数多く指摘されており,また,それぞれの事業がどの程度根拠に基づいているのか明確ではないことが多い。そこで,本研究では,地域住民ニーズの把握が事業に与える影響と,他部署・他機関との連携の現状を明らかにすることを目的とした調査を行った。<br/>方法 2003年 9 月~11月,政令指定都市を除く全国市町村健康づくり部局を対象に,各市町村規模,「健康日本21」に関連した計画策定,計画の実行,評価(地域住民ニーズの行政施策への反映,健康水準への貢献,事業の有効性の根拠),将来的な計画遂行構想,住民を対象とした取り組み,市町村の属性等 7 領域についての質問紙調査を行い,地域住民ニーズの把握が事業に与える影響と,他部署・他機関との連携について検討した。<br/>結果 調査対象は1,975市町村(回収率61.4%)であった。地域住民ニーズの把握状況は,「把握している」41.2%,「把握していない」56.2%であった。「健康づくり」分野における地域住民ニーズの把握の重要性は,「とても必要」75.1%,「どちらかといえば必要」22.6%であった。把握した地域住民ニーズの行政政策への反映は,「反映している」44.9%,「反映していない」26.4%,「わからない」17.5%であった。「健康づくり」に関する事業による住民の健康水準への貢献は,「貢献してきた」87.1%,「貢献してこなかった」2.5%,「わからない」9.0%であった。健康づくりに関する事業の有効性の根拠は,「事業には有効性があると判断できる根拠がある」14.4%,「事業には有効性があると思うがその根拠が明らかでない」75.8%であった。「地域住民ニーズの把握状況」と「行政施策への反映」,「地域住民ニーズの把握状況」と「事業の有効性の根拠」との間には有意な関連がみられた。<br/>結論 6 割の市町村で地域住民ニーズを把握していない現状が明らかとなった。地域住民ニーズを把握している市町村のほうが,行政施策や住民の健康水準の貢献に反映していた。また,事業の有効性の根拠を持っている市町村は,行政施策にも反映できていた。これらのことより,地域住民ニーズを把握することが,効果的な事業を企画,実施していく上で必要であり,単に住民ニーズを「知る」以上の効果があることが示唆された。
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