住民健診(基本健康診査)の結果に基づいた脳卒中・虚血性心疾患・全循環器疾患・がん・総死亡の予測
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 大規模なコホート研究により,住民健診の検査結果とその後の死亡との関連を分析し,パソコン上で簡便に使用でき,日常診療,保健活動に役立つ予測ツールを作成する。<br/>方法 茨城県内の38市町村における1993年度,40-79歳の住民健診受診者のうち,血圧値のない者また脳卒中および心疾患の既往者を除く92,277人(男性31,053人,女性61,224人)を対象として,住民健診の検査項目とその後の死亡(脳卒中,虚血性心疾患,全循環器疾患,がん,総死亡)との関連を,COX 比例ハザードモデルを用いて解析した。検査項目の12項目のうち,男女別に変数減少法を用いて予測項目を絞り推定モデルを決定した。<br/>成績 2001年末までの平均8.0年の追跡期間に,総死亡5,260人(脳卒中710人,虚血性心疾患389人,がん2,322人)を認めた。推定モデルにおける予測因子は,男性では,総死亡に関して全項目(高齢,収縮期血圧高値,高血圧治療歴,HDL-コレステロール低値,クレアチニン低値および高値,肝機能異常,糖尿病,Body Mass Index (BMI)低値,現在喫煙,多量飲酒,尿蛋白異常)で有意な関連を示した。全循環器疾患に関しては高齢,収縮期血圧高値,高血圧治療歴,総コレステロール低値及び高値,HDL-コレステロール低値,クレアチニン高値,糖尿病,BMI 低値,現在喫煙,尿蛋白異常で,がんに関しては高齢,高血圧治療歴,HDL-コレステロール低値,クレアチニン低値,肝機能異常,糖尿病,BMI 低値,現在喫煙,多量飲酒,尿蛋白異常で有意な関連を示した。また,男性の脳卒中に関しては高齢,収縮期血圧高値,高血圧治療歴,HDL-コレステロール低値,クレアチニン高値,肝機能異常,BMI 低値,現在喫煙で,虚血性心疾患に関しては高齢,収縮期血圧高値,総コレステロール高値,HDL-コレステロール低値,糖尿病,現在喫煙,尿蛋白異常で有意な関連を示した。女性では有意な関連を示さない項目がいくつかあったものの,選択された項目の傾向は男性とほぼ変わらなかった。<br/>結論 脳卒中,虚血性心疾患,がんの予防の健康教育において使用できる,5 年以内の死亡率を推定する簡便なパソコン予測ツールを作成した。本ツールは受診者の動機付けに繋がり,健康教育に有用と期待される。
- 日本公衆衛生学会の論文
日本公衆衛生学会 | 論文
- 心理的健康の維持・増進のための望ましい生活習慣についての疫学研究
- 脳卒中予防対策地域における脳卒中発生状況と重症度の推移に関する疫学的研究
- 健康づくりのための運動指針2006の認知状況と他の健康づくり施策の認知および人口統計学的変数との関連
- 在宅生活をしている統合失調症患者のWHOQOL-26尺度に影響を与える要因の検討
- 肥満児の体力と保健指導プログラムにおける運動療法の効果