ソーシャルサポート・ネットワークと在宅高齢者の検診受診行動の関連性 社会的背景の異なる三地域の比較
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概要
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目的 在宅高齢者の検診受診行動とソーシャルサポート・ネットワークとの関連性について,社会的背景の異なる三地域で男女別・地域別に検討する。<br/>方法 北海道内の都市部・札幌市(70歳),旧産炭過疎地域・夕張市(69歳・70歳),都市近郊農村・鷹栖町(69歳以上75歳未満)の三地域で調査・集計を行った。<br/> 調査項目は,社会的活動性として各種団体(町内会,老人クラブ等)への加入状況および活動性,所属する団体での役職経験の有・無,社会への関心の度合い(広報誌,新聞,選挙・政治への関心など),趣味および生きがいの有・無,別居子および近隣との接触頻度,親友・親密な親戚の有・無,ソーシャルサポートの授受の状況として,手段的及び情緒的サポート(困窮時の援助者,および悩み事が生じた際の相談相手の有・無および人数),手段的・情緒的サポートの提供の有・無,等の項目について,自記式で回答を得た。χ2 検定と Mantel-Haenszel の検定を用いて,地域で層別化し男女別に検診「受診群」と「非受診群」を比較した。<br/>結果 男性・女性の両者ともに,「受診群」は「非受診群」に比較して,町内会・老人クラブ等の各種団体へ加入し,活発に活動している者,所属する団体での役職経験が有り,行政の広報誌をよく読み,政治への関心を有する者の比率が高く,検診受診行動と有意な関連が認められた。男性のみでは,選挙への関心が有る者,趣味や生きがいの有る者の比率が高かった。女性の「行った活動状況」についてのみ地域差を認め,鷹栖町では「受診群」において,行った活動が有りの者の比率が高かったのに対し,札幌市・夕張市では「受診群」・「非受診群」で差が無かった。<br/> 男性・女性に共通して「受診群」は「非受診群」に比較して,親友を有する者の比率が高かった。男性のみでは,さらに「受診群」で親密な親戚を有する者ならびに近隣とより親密な関係を有する者の比率が高く,検診受診行動との有意な関連が認められた。<br/> 男性においてのみ「受診群」は「非受診群」に比較して,手段的・情緒的サポートを多く受領しているだけでなく,さらにサポートの提供を自らしている者の比率が高く,検診受診行動と有意な関連を認めるという結果が得られた。しかし,女性ではいずれの項目も有意な関連を認めなかった。<br/>結論 高齢者の検診受診行動は,ソーシャルサポート・ネットワークが関連を有することが明らかになった。
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