地域高齢者とともに転倒予防体操をつくる活動の展開
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概要
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目的 後期高齢者が自宅において一人で実施可能であり,転倒予防に必要な脚筋力や身体バランス能力,柔軟性などを維持改善するために有効な体操プログラムをつくる転倒予防教室を開催し,参加した後期高齢者の評価をもとに動作を選定しプログラムを作成した。本論では,この転倒予防体操プログラムの作成の経緯と内容を紹介するとともに,その効果について検討した。<br/>方法 宮城県 S 町の75歳以上の高齢者で,介護保険の要支援および要介護認定者を除外した551人を対象とした。調査対象地域の中に介入地区と非介入地区を設定し,介入地区の対象者のうち「過去 1 年の転倒歴あり」と「最大歩行速度が中央値より遅い」を基準として特に転倒の危険性があると思われる者85人(男性29人,女性56人)を抽出した。このうち転倒予防教室への参加を表明した者は40人(男性15人,女性25人)であった。参加者は,柔軟性の強化,脚筋力の強化,身体のバランス維持,つまずき防止の要素を勘案した30種類の体操を体験し,毎回教室終了後に体操の評価を行った。この転倒予防教室に参加した対象者への介入効果については,ベースライン調査から 1 年後に実施した面接調査および身体機能の測定の結果から分析を行った。また,作成された体操プログラムの運動強度として METS 値を算出した。<br/>成績 各体操の評価得点ランクをもとに教室参加者との協議により,立位ならびに床座位による10種類の体操と椅子を使用する 7 種類の体操を選定し,転倒予防体操プログラムを作成した。この体操プログラムの運動強度(METS)は,学生3.41±0.37,推進員3.16±0.47,後期高齢者3.08±0.49でありいずれの群間にも有意差はみられなかった。1 年間の転倒発生率は,教室参加者で教室開始前48.4%から教室終了後25.8%と低下し有意差がみられたが,不参加者では変化がみられなかった。また,開眼片足立ちの時間は,女性においてのみ,教室参加者で教室開始前から教室終了後に有意に延長し,不参加者では有意な変化はみられなかった。<br/>結論 今回の介入結果から,計12回の転倒予防教室を通じて作成された体操プログラムを自宅でも実践することによって,転倒発生率が低下する可能性が示唆された。
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