短期大学における衣服関連実習の効用
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概要
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<BR>【目的】<BR> 衣服領域の実習において、教材研究に関する研究は存在する。し<BR>かし、衣服関連実習の持つ特性から、短期大学教育に言及し、その<BR>効用を論じた研究は少ないように思われる。<BR> そこで、今回の調査対象である短期大学生の状況を概観した上で、<BR>衣服関連実習の効用を、また、それを可能にする要因を明らかにす<BR>ることを試みる。そこから、今後の短期大学における衣服関連実習<BR>のあり方を考察したい。<BR>【方法】<BR> インタビュー調査、および、郵送による質問紙調査を実施した。<BR>・筆者が担当したO短期大学「衣服構成実習」(学科専門の選択科<BR>目であり、家庭科の教育免許必修科目、通年、135分/1コマ、<BR>2単位)を履修した近隣に居住する卒業生5名に半構造化インタ<BR>ビューを実施した(2011年3月)。<BR>・同様に筆者が「衣服構成実習」を担当した過去8年間の単位取得<BR>者44名の内、同窓会等に問い合わせて住所が判明した38名に質<BR>問紙を郵送した(2011年8月)。<BR>・調査内容は、受講理由、受講時の感想、単位が取得できた理由、<BR>実習を受講して身に付いたと思う事項など、選択肢法または自由<BR>記述で尋ねた。なお、調査への協力の有無は本人の意思を尊重し<BR>て実施された。<BR>・回収数は13件であった(回収率34.2%)。<BR>【結果と考察】<BR>1.今回の調査対象の短期大学は、おおよそ偏差値45の家政系学科で ある。対象科目は、単位取得の効率の悪さ、2回生開講科目である ため受講者が少ない。受講者は教免希望者が多数を占めるが、親の 希望や入学後に取得できることを知った受講者が多い。<BR>2.インタビューの結果を整理した質問紙による結果を示す。<BR>・受講後の感想は、「辛い」(平均3.8)が、「楽しい」(平均4.6) (5件法)であり、辛い理由は「基礎縫い」「やり直し」「提出期限」、楽しい理由は「友達」「おしゃべり」「自信」「達成感」が抽出された(自由記述)。<BR>・単位が取得できた理由は、「少人数実習」「友達と一緒」「補習時間」「教免必修」「教員の面倒見」「自分サイズ作品」(選択肢法・複 数回答)が多く挙げられた。<BR>・実習で身に付いたものは、「日常的な衣服の補修」「達成感」「衣 服の構成」「ミシンの縫製技術」が多く挙がったが、特に自分の 中で大きかったものを限定させると「達成感」が特に高く「自信」「計画性の大切さ」(選択肢法・複数回答)が続いた。<BR>・卒業後に役に立っていることは、「日常的な衣服の補修」という 本来の内容に併せ、「根気強さ」「辛抱強くなった」「耐え抜くこ との大切さ」(自由記述)といった忍耐力が挙がっている。<BR>・本実習を全体的にどのように捉えているのかについては、「修行」「達成感」「大変」「楽しい」(自由記述)等が挙げられた。<BR>本来の授業目的と併せ、社会人基礎力に挙げられている、失敗して もねばり強く取り組む力や「計画力」の付与、「達成感」を持たせ ることにより、これまで持つことの難しかった自信を付与させ、今 後生きる上での糧とさせることが出来るのではないかと思われる。<BR>3.「辛い」で辞めさせることなく「楽しい」そして、「達成感」へと 導く事を可能にする要因として、少人数教育、何らかの強制力(こ こでは教免必修)、補習時間の確保と併せてカウンセリングマイン ドを持った教員配置(実習助手)が挙げられるのでないか。<BR>4.衣服関連実習は、その特性を利用しつつ、基本的な人間教育に活か していけるのではないかと考える。<BR>
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