完全唇・顎・口蓋裂患者の歯科矯正治療によるcross-biteの改善の様相
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概要
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唇・顎・口蓋裂患者に対する歯科矯正治療における重要な目標の1つに上歯列弓拡大による前歯部, および臼歯部のcross-biteの改善が挙げられる.しかし現実にはこれらcross-biteが当初の治療計画通りに全て改善されているとは限らない.そこで著者らは独白に考案したゲージを用いて上歯列弓拡大前のcross-biteの様相を定量的に把握し, さらに可及的に拡大した後においてもcross-biteがどの程度までしか改善されなかったかを検討した.被験者資料として6才から11才の間に大阪大学歯学部附属病院矯正科に来院した片側性完全唇・顎・口蓋裂患者(UCLP)37名, および両側性完全唇・顎・口蓋裂患者(BCLP)18名について上噛列弓拡大前, および可能な限り拡大した後に得られた石膏口腔模型を用いた, 対照としては大阪大学歯学部矯正学講座所蔵の発育研究資料のうち20名より得られた, 6才から15才までの経年的石膏口腔模型を用いた.cross-biteの評価部位には左右の中切歯, (乳)犬歯, および第1大臼歯の計6部位を撰択した.<BR>この結果, 次の(研究成績が得られた.)ことが明らかになった.<BR>1)上歯列弓拡大前のcross-biteの様相, UCLP群:cross-biteの程度が最も強かったのは中切歯部であり, 次いで犬歯部, 第1大臼歯部の順であった.また, これらの部位において, 非破裂側よりも破裂側のcross-biteの程度が強かった.BCLP群:各部位でUCLP群の破裂側と同程度のcross-biteを認めた.<BR>2)上歯列弓拡大後の様相, UCLP群, BCLP群ともに第1大臼歯部では良好なcross-biteの改善が認められたが中切歯部, 犬歯部ではcross-biteが残存する傾向が認められた.<BR>3)上歯列弓拡大による上下対咬関係の推移, UCLP群:非破裂側よりも破裂側, また臼歯部よりも前歯部において上下対咬関係で検討した拡大量は大きかった.またBCLP群よりも, UCLP群においてこれらの変化が大きい傾向を示した.
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