軟口蓋片側切除による鼻咽腔閉鎖機序の変遷について
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概要
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正常発音機構が確立された成人が突如,鼻咽腔閉鎖不全を与儀なくされた場合,一度獲得された調音機構にどの様な変化を来たし,言語発音が如何なる変遷をみるかは,まだ不明な点が多い.この点を究明することは,口蓋裂患者の言語改善機序を知る上で何らかの指針を与えるものと考えられる.今回,私達は, 片側軟口蓋切除によって,高度な言語障害を来たした2例に,術前より術後スピーチエイド装着に至るまでの鼻咽腔閉鎖機能及び言語の状態を,流体力学的検査,口蓋帆挙筋の筋電図検査, 発語明瞭度検査,鼻咽腔ファイバースコープによって観察し,年長者におけるその適応状態を検討した.<BR>その結果<BR>1.軟口蓋切除により,2例とも当初より,開鼻声を主とした言語障害を呈し,口蓋裂言語障害に酷似した症状を呈した.<BR>2.術後の軟口蓋筋の筋電図学的活動量は,発音時に比し,吹き出し時, 嚥下時に著明な増強を認めた.<BR>3.スピーチエイド装着により鼻咽腔閉鎖機能が改善されると,速やかに構音運動も正常化された.これらのことから,正常人においても絶対的鼻咽腔閉鎖不全の状態になると,口蓋裂患者と酷似した発音となり, 軟口蓋筋活動においては,嚥下時や吹き出し時に比し,発音時には,短期間に著明な変化を来たさないことが示唆された.このことは口蓋裂患者においても,短期間に発音時の鼻咽腔閉鎖運動の様式を変えることは容易でないことを示唆していると考えられた.
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