上顎側切歯先天性欠如を伴う唇顎口蓋裂患者の一治験例:-下顎小臼歯抜歯で顎裂を縮小しえた症例-
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概要
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唇顎口蓋裂患者では,顎裂部に歯の先天性欠如がみられることが多く,歯科矯正治療後に欠損補綴治療を要する場合が多い。今回,上顎左右側切歯および上顎右側第二小臼歯の先天性欠如を伴う左側唇顎口蓋裂に起因する骨格性下顎前突症患者に,下顎左右第一小臼歯を抜歯して上顎前歯部と下顎抜歯部の空隙を閉鎖することで顎裂の縮小をはかり,鼻翼基部の挙上および顎裂の閉鎖を目的に自家腸骨海綿骨細片移植を行った患者の歯科橋正治療について報告する。<BR>症例は,初診時年齢7歳6カ月の女児で,歯並びと受け口を主訴に当科に来院した。ほぼ全歯にわたり反対咬合を呈しており,SNA 66°,SNB 69.5°,ANB -3.5°,FMA 27° と上顎の劣成長がみられた。<BR>Fan type expansion plate,つづいてQuad helixを用いて側方歯群の被蓋改善をした後,Utility archを用いて前歯部被蓋改善を行った。下顎小臼歯を抜歯せず上顎前歯部欠損補綴を行うことも検討したが,左右下顎第一小臼歯を抜歯し上下顎歯列の空隙閉鎖を行うことで顎裂を縮小させ,欠損補綴治療をせずに治療を行った。上顎前歯部の空隙閉鎖後,左側鼻翼基部の挙上を目的に同部および顎裂部に腸骨海綿骨移植を行い,上顎犬歯の形態修正をして矯正治療を終了した。<BR>上顎側切歯の先天性欠如により生じた空隙と下顎小臼歯を抜歯して生じた空隙を閉鎖することで,側貌が改善するとともに顎裂が縮小し欠損補綴治療をせずに治療を行うことができた。顎裂が縮小することで,鼻翼起部を挙上し顎裂を閉鎖するために採取する腸骨海綿骨の量が少なくてすみ,比較的短い手術時間で効果的に鼻翼起部の拳上を行うことができた。
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