口唇裂口蓋裂患者の下顎骨皮質骨厚:パノラマX線写真による評価
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
若年期の長期にわたる咀囑機能障害が下顎骨の内部構造に及ぼす影響の有無を検討するため,パノラマX線写真上での下顎骨皮質骨厚(MCW)を指標として評価を行った.研究対象は,上顎歯槽弓狭窄を伴う咬合異常に関連して咀囑機能障害を有すると考えられる口唇裂口蓋裂患者とし,臼歯部の咬合状態および顎顔面形態との関連性を検討した.<BR>唇顎口蓋裂あるいは口蓋裂を伴い歯科矯正治療前に臼歯部交叉咬合を呈していた患者(CP群:女子)25名を被験者群,非破裂者で臼歯部咬合関係に著しい異常を呈していなかった本学附属歯科衛生士学校学生(NC群:女子)30名を対照群とし,成長完了時(CP群:平均19歳0カ月,NC群:平均19歳2カ月)のパノラマX線写真と側面頭部X線規格写真を資料として用いた.パノラマX線写真上でオトガイ孔直下でのMCW,および側面頭部X線規格写真上で11項目を計測し,2群問の有意差の有無を検討した.さらに,側面頭部X線、規格写真計測値とMCWとの関連性を相関分析により検討した.その結果,以下の所見が明らかとなった.<BR>1.MCWはCP群3.3mm,NC群3.6mmで,CP群はNC群と比較して有意に小さな値を示した.<BR>2.CP群はNC群と比較して,上顎部の後方位,下顎枝高の短小,下顎角の開大,下顎下縁平面の急傾斜を示した.また,いずれの所見も両群問で有意の差を示した.<BR>3.MCWと有意な相関が見られたのは,CP群では下顎角,NC群では下顎下縁平面角,前顔面高,後顔面高/前顔面高であった.<BR>以上の結果から,若年期の咀噛機能障害は顎顔面形態ばかりでなく下顎骨皮質骨厚から見た骨の内部構造にも影響を及ぼすことが強く示唆された.
- Japanese Cleft Palate Associationの論文
Japanese Cleft Palate Association | 論文
- 北海道大学病院高次口腔医療センターにおける口唇裂・口蓋裂患者の臨床統計的調査
- 齲蝕と顎発育の関連性について
- 下顎前歯を移植することで咬合の改善を図った上顎片側側切歯先天欠如を伴う唇顎口蓋裂の2症例
- 5-Year-Olds' Indexの基準模型における精度と再現性の評価
- NAM治療後にTwo flap口蓋形成手術を行った左側唇顎口蓋裂症例