5.二次手術としてのpushback法と顎発育
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概要
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当科では口蓋裂の初回手術法としてpalatal pushback法を用い96.5%の症例に良好な鼻咽腔閉鎖機能の獲得をみている.残りの症例には何らかの二次手術が必要となるが,当科では鼻咽腔に著しい構造的・機能的欠陥のある症例を除き,おもにrepushbackを行い咽頭弁は使用していない.本法により鼻咽腔閉鎖機能に優れた改善が得られるが,2度の手術による顎への侵襲は不明であった.そこで,今回,repushabackが顎発育におよぼす影響について検討したので報告した.<BR>材料・方法:当科でrepushback法を施行された64例(粘膜下口蓋裂を除く)のうち初回手術も当科で施行されたのは9例であった.このうち頭部X線規格写真による分析が行えたのは6例で,両側性唇顎口蓋裂,片側性唇顎口蓋裂が各1例,残りは口蓋裂単独例で,鼻咽腔閉鎖機能不全の原因として5例が術後癩痕拘縮による軟口蓋の短縮で,1例は先天性短小軟口蓋例であった.また,repushback法施行年齢は2歳1ヵ月-6歳4カ月(平均3歳10力刀)であった.また,repushback後の経過観察期間は1年-3年3カ月(平均2年1カ月)であった.この6例の顎発育を同じ裂型でrepushback法などを行ってV・ない同年代の症例を対照として比較した.<BR>結果および考察:6例全てに鼻咽腔閉鎖機能の改善を認めた.また,V・ずれの症例においてもrepushback後の顎形態は対照群と同様,口蓋裂初回手術前の顎形態との類似性を認めるものの,手術によると思われる明らかな成長抑制は見られず,上顎の前方および下方への成長は対照群と同程度であった.従って;pushbackを二度繰り返し行っても顎発育におよぼす影響は初回手術のみの症例と同程度に少なく,repushbackは鼻咽腔閉鎖機能の改善を目的とする二次手術法として機能的にも形態的にも有用であると思われた.
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Japanese Cleft Palate Association | 論文
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