8.矯正歯科の立場から
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概要
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口蓋裂者の矯正的問題はこれまでも指摘されてきたように,上顎の変形,歯列のcollapse,各種歯の異常および下顎の形態と位置の変異の4つに集約される.このうち歯列や粛の位置の不正は歯槽骨と関連する問題で,裂部の実質欠損を除いて,癩痕拘縮によるベンディングはあっても極端な成長不足は通常認められない・加えて,矯正治療に最も良く対応する箇所でもある.また,下顎は個々独立した成長を示すものの,その位置は間接的に上顎の影響を受けている.一方,上顎の劣成長による変形はこの疾患特有のものであり,その他の問題の主導的役割を演じている.<BR>従って,口蓋裂者に対する矯正歯科的アプローチの最重要ポイントは,それがどれほど上顎の成長に影響を与えて,より良い上顎形態へ誘導できるか否かである.この点については,従来上顎拡大によって上顎基底骨の成長に好影響を及ぼすことが期待されてきた.しかし残念なことに,現在ではこれらの矯正処置による影響は僅かか,あるいはほとんどないことか科学的に証明されている.このことから推測すると,学童期を対象とする矯正アプローチの効果は極めて限定的である.救いがあるとすると,'80年代初頭より適用され始めた上顎前方牽引であるが,元来中顔面の扁平な日本人について効果を過信するのは禁物である.<BR>そこで勢い劣成長の上顎に対し,下顎を長期にわたって成長を抑制して,少なくとも上下顎を前後的に調和をとろうとする治療方針がとられてきた.しかし,ここ数年来,この長期にわたる治療が効果と患者側の心理的,経済的負担との価値判断から批判されるようになった.その結果,現在最も合理的な口蓋裂者に対する矯正的マネージメントとして,より晩期の矯正治療と外科矯正による上顎の前方移動が拾頭してきていることも事実である.
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