口蓋裂手術時の鋤骨への手術的侵襲が上顎骨の成長発育に及ぼす影響:純系ビーグル犬における実験的研究
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概要
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口蓋裂手術では,鼻中隔下縁を構成する鋤骨に対し何らかの手術的侵襲を加えざるを得ないことがあるが,これが上顎骨の成長発育にどのような影響を及ぼすかにっいては全く検討されていない.本研究は犬を用いて,生後の可及的早期に人工口蓋裂を形成し,口蓋裂閉鎖手術および鋤骨切除に関する実験モデルから鋤骨に対する手術的侵襲が顎顔面の成長発育にいかなる障害を惹起するかを実験的に検討したものである.実験には9頭の牝犬から生れた45頭の純系ビーグル犬を用い,同胞5頭が以下の実験群にそれぞれ配分されるように分類した.まず,Control Groupに属する9頭を非手術対照群とした.手術群に属する36頭については,生後21日目に切歯孔から後方に向う人工口蓋裂を骨口蓋上に形成し,生後42日目にV-Y法に準じた口蓋裂閉鎖手術を行なった.口蓋裂閉鎖手術に際して,Anterior Vomer Resection Group(AVR群)では鋤骨前方の1/2部を切除し,Posterior Vomer Resection Group (PVR群)では鋤骨後方の1/2部を切除し,Entire Vomer Resection Group(EVR群)では鋤骨(前方+後方)を全摘出し,Cleft Palate Repair Group(CPR群)では口蓋裂閉鎖手術のみを行なった.その結果,鋤骨切除を行なったAVR群,PVR群,EVR群ではいずれも前爾部における著明な反対咬合および上顎骨の前方発育障害が見られた.人工口蓋裂の形成と閉鎖手術のみを行なったCPR群は非手術対照群とほぼ同様な上下顎の成長発育を示した.犬における本実験モデルの結果は,口蓋裂閉鎖手術における鋤骨への手術侵襲(切除)が上顎骨の前後的成長発育障害を惹起しうることを示唆したものである.
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