生醤油の香気特性と加熱による変化
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概要
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目的:醤油の香りは品質を左右する重要な要因であり、香りの生成には火入れ工程が重要な役割を果たすことが知られている。近年、火入れをしない生醤油(なましょうゆ)が開発、市販されているが、その香気特性に関する報告は殆どない。本研究では生醤油の香りの特徴を明らかにすることを目的とし、火入れ醤油と比較すると共に、加熱における香りの変化を検討した。 方法:生醤油と火入れ醤油からカラム濃縮法により香気濃縮物を調製した。得られた香気濃縮物をGC-MSで分析し、AEDA( aroma extract dilution analysis)法によって香りの特徴と強度を評価した。さらに、加熱調理を想定し、加熱した生醤油と火入れ醤油の香気濃縮物も同様に分析した。 結果:GC-Oの結果、加熱前の生醤油は火入れ醤油より甘く香ばしい香気成分が多かった。生醤油は加熱により感知できる香気成分の数が増加したが、火入れ醤油では減少した。AEDAの結果、加熱前の生醤油、火入れ醤油中のFD-factor(FDf)の最も高い香気成分はカラメル様の4-Hydroxy-2(or 5)-ethyl-5(or 2)-methyl-3(2H)-furanoneで、生醤油では加熱後も同様であった。加熱した火入れ醤油では煮たジャガイモ様のMethionalの寄与が高かった。加熱後、FDf 1024以上の香気成分は生醤油で4種、火入れ醤油は1種であり、生醤油は香りが高く保持された。以上の結果は、生醤油は甘く香ばしい香りを持つが、加熱してもこの特徴を保持し、より豊かで複雑な香りになることを示し、このような生醤油の特性は加熱調理にも望ましいと考えられた。
- 日本調理科学会の論文
日本調理科学会 | 論文
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