低分子量ヘパリン薬(ダルテパリン)を併用した川崎病治療法開発の予備的検討
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概要
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目的:低分子量ヘパリン薬 (ダルテパリン dalteparin,以下,ダルテパリンとする) を併用した γ -グロブリン + アスピリン療法およびダルテパリンを併用したアスピリン単独療法の心障害,心後遺症,不応例出現率を明らかにして,今後,無作為化比較試験を行うための予備的検討を行う.方法:後方視的検討で,対象患者は2004 年 1 月から 2008 年 6 月までに,日大練馬光が丘病院小児総合診療科に入院した川崎病の 126 名 (男児 68例,女児 58 例).年齢は平均値 ± SD:2 歳 2 か月 ± 3 歳 1 か月 (1 か月~14 歳 1 か月) である.対照として厚労省川崎病研究班 第 19 回川崎病全国調査 (2006) の患者データを利用した.ダルテパリンを併用した γ -グロブリン + アスピリン療法 79.9% (400 mg/kg/日 × 5 日間の投与群 75.3%) およびダルテパリン + アスピリン単独療法 20.1%で治療した川崎病患者の冠動脈病変について,入院時から退院後 3 か月までの間,超音波断層検査で冠動脈病変の有無について検討した.成績:γ -グロブリン初回投与例 (%) は当院 80.1%,全国調査 86.0% (p < 0.001),γ -グロブリン追加投与例 (%) (不応例出現率) は当院 8.1%, 全国調査 16.2% (p < 0.001), 心障害 (急性期) 出現率 (%) は 当院 4.8%,全国調査 12.9% (p < 0.02), 心後遺症出現率 (%) は当院 0.0%,全国調査 3.8% (p < 0.03) であった.結論:ダルテパリンを併用することで,不応例出現率および心障害出現率を軽減できる可能性がある.ただし,γ -グロブリン 400 mg/kg/日 × 5 日間の投与群という従来法であるため,今後,国際的に認知されている大量 γ -グロブリン療法を採用した無作為化比較試験を行う必要がある.
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