内視鏡下鼻内手術後に病態が判明した原発性線毛運動不全症の2例
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概要
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原発性線毛運動不全症(primary ciliry dyskinesia;PCD)は,常染色体劣性遺伝による先天的な線毛の機能異常を病因とする。今回,内視鏡下鼻内手術後に病態が判明したPCDを2例経験した。症例1は,26歳女性。慢性副鼻腔炎と左慢性中耳炎に対して,内視鏡下鼻内手術と左鼓室形成術を施行した。症例2は,19歳男性。慢性副鼻腔炎,鼻中隔弯曲症に対して,内視鏡下鼻内手術を施行した。いずれの症例も,PCDと診断であることを診断しえたのは,術後も粘性鼻漏が継続するなどの経過不良であったため,術後にあらためて,下鼻甲介粘膜の生検を行ってからであった。両症例とも術前からみられた粘性鼻漏が,術後も変化なく継続し,術前診断の重要性を認識させられた。PCDの診断にあたっては,詳細な病歴聴取(幼小児期発症の肺炎罹患の既往),胸部X線所見で肺浸潤影,無気肺などの存在,副鼻腔CT所見で前頭洞および蝶形骨洞の発育不全または低形成,鼻症状(粘稠な鼻漏を大量持続性に認める),中耳炎の合併等があげられる。PCDであった場合,内視鏡下鼻内手術後も粘調な持続性鼻漏は改善されない可能性があり,術前に十分な説明が必要となる。
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