鼻中隔より発生したグロムス腫瘍の1例
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概要
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グロムス腫瘍は末梢動静脈吻合部に存在するグロムス小体由来の良性腫瘍で,グロムス細胞の増殖と血管成分より構成される過誤腫とされる。四肢に好発するが,グロムス小体がほとんど存在しないとされる鼻腔での発生は稀である。今回われわれは鼻出血を主訴に受診し,病理組織学的所見から鼻腔グロムス腫瘍と確定診断された症例を経験した。症例は79歳男性。反復する左鼻出血で当科を受診され,鼻中隔左側面と左中鼻甲介の間に腫瘤性病変を認め,生検により病理組織学的にグロムス腫瘍と確定診断された。画像所見で腫瘍の基部が鼻中隔に限局していた事や,造影効果が強くなく生検の際に出血も少なかった事より,鼻中隔軟骨膜下の層で鼻中隔粘膜を剥離し腫瘍と一塊に切除すれば腫瘍本体を損傷せず安全に摘出が可能と判断し,術前に血管塞栓術を施行せずに内視鏡下鼻内手術を施行した。手術は腫瘍基部前方のやや離れた部分の鼻中隔粘膜を電気凝固・切開し,鼻中隔軟骨膜下の層で鼻中隔粘膜を腫瘍と一緒に剥離,挙上した。その後,腫瘍周囲の鼻中隔粘膜の正常組織を数mm付けて鼻中隔粘膜ごと腫瘍を一塊に完全摘出した。腫瘍摘出後に切除部後下方より中隔後鼻動脈からと思われる拍動性の出血を認めたため,電気凝固にて止血を行った。術中の出血は少量で,術後出血も認めなかった。現在,術後8カ月で明らかな再発所見は認めず,引き続き外来で経過観察中である。
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