当科における上顎洞真菌症手術例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
副鼻腔真菌症は保存的治療で改善が乏しいことが多く, 外科的治療が第一選択となる。今回2000年から2009年までに当科で手術治療を行い, 上顎洞真菌症の確定診断を得た38例について評価を行った。年齢は30歳から80歳, 性別は男性19例, 女性19例であった。術前のCT検査は全例に施行されており, 32例で石灰化病変を認めた。MRI検査は28例で行われ, 全てにおいてT1強調画像で低信号, T2強調画像で低信号を示し, 真菌症に特徴的な画像が得られた。全症例で内視鏡下手術が行われた。上顎洞へのアプローチ方法は中鼻道経由の自然口開大を行った症例が15例, 自然口開大と下鼻道経由の対孔作成を行った症例が23例, 対孔のみ作成した症例は再手術例の1例であった。再発所見は4例に認めた。2例は初回手術で自然口開大を行ったが閉鎖してしまったため再手術を行い, 2例は初回手術に作成した対孔からの局所処置で対応が可能であった。当科では上顎洞へのアプローチ法を決定する際に術前のCT, MRIで評価している。真菌塊の位置を確認し, 自然口付近にあるものは自然口の開大のみ, 上顎洞前壁や底部に存在するものは対孔も作成する方針としている。対孔からの術後処置が有用であることから対孔を開存させるよう心掛けている。下鼻道粘膜で粘膜弁を作成し, 骨露出部を覆うことで対孔の閉鎖が回避でき, 対孔の開存率は88.9%と改善した。
- 日本鼻科学会の論文
日本鼻科学会 | 論文
- 慢性副鼻腔炎鼻汁の成因とその対策
- アレルギー性鼻炎におけるリモデリングとその制御
- アレルギー性鼻炎を合併した小児急性鼻副鼻腔炎の治療
- 慢性副鼻腔炎における後鼻漏の原因とその治療
- 鼻・副鼻腔疾患の鼻汁過多における分泌細胞と炎症細胞の役割