脳卒中診療医における観血的処置時の抗血栓薬の休薬に関する多施設アンケート調査結果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【背景及び目的】観血的処置に際しての抗血栓薬の休薬についての問題は,近年エビデンスの蓄積により一定のコンセンサスを得られるようになっている.しかし,抗血栓療法は新薬の登場や併用療法等,さらに複雑化の様相を呈している.今回我々は脳卒中診療に従事する医師にアンケートを取ることにより現状の把握と問題点について検討した.【方法】2010年1~2月にかけて12施設にアンケートを依頼した.対象は180人であり,様々な背景を設定した症例に対して観血的処置をすると想定した場合の抗血栓薬の休薬について質問を行った.また,抗血栓薬中断に関するガイドライン利用の有無,抗血栓薬中断時の脳梗塞発症経験の有無についても質問を行った.【結果】抜歯,白内障手術においては,抗血小板薬の内服を継続するとの回答が多く得られたが(75~90%),内視鏡処置では処置のリスクや脳梗塞再発リスクにより回答が分かれた.ワルファリン服用時の休薬に関しても同様の結果であった.休薬時にヘパリンに置換するかどうかについては,心房細動時に選択する回答は多くみられたが(53~77%),症候性頸動脈狭窄においてはヘパリン置換を選択する回答は少なかった(37%).さらには,抗血栓薬2剤併用時の対応についての回答はばらつきがみられた.また,様々な基礎疾患において抗血栓薬休薬中に実際血栓症の発症を経験したことがあるかどうかについては,頸動脈狭窄,頭蓋内動脈狭窄いずれにおいても有意に症候性の症例で多くの脳梗塞の発症経験があり,ワルファリンについても,奇異性脳塞栓症や発作性心房細動に比べ,弁膜性,非弁膜性心房細動でより脳梗塞を経験しているとの回答が得られた(p<0.01).【結論】抜歯,白内障手術については,多くの医師が抗血栓療法を継続すると回答し,ガイドラインが普及しつつあると考えられた.一方,内視鏡処置時の対応,休薬中のヘパリンの使用,抗血小板薬の多剤併用時等に関する対応についてはエビデンスが乏しく,一定のコンセンサスが得られていないのが現状であり,今後の課題と考えられる.
- 一般社団法人 日本脳卒中学会の論文
一般社団法人 日本脳卒中学会 | 論文
- Two cases with aphasia in the left putaminal damage and one case with visuospatial neglect in the right putaminal damage
- Alterations of plasma von Willebrand factor activity and the influence of anti-platelet drugs in acute cerebral infarction
- Carotid endarterectomy plaques correlation of clinical events and morphology.
- Stenting for stenosis of major cerebrovascular arteries.
- Cerebral infarction following antihypertensive therapy.