保存的加療で軽快した腹腔動脈起始部狭窄を伴う孤立性上腸間膜動脈解離の1例
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概要
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患者は60歳の男性。食後の突然の心窩部痛のため近医を受診した。腹部造影CTでは大動脈解離を認めないものの上腸間膜動脈は起始部から約3cm解離していた。偽腔内に造影効果を認めず,真腔狭窄を伴っているが腸管の造影不良域を認めなかった。腹腔動脈起始部には軸位断で横行する軟部陰影を,矢状断で索状狭窄を認め正中弓状靭帯による狭窄と考えられた。腹腔動脈起始部狭窄を伴う孤立性上腸間膜解離の診断で当院へ転送された。腸管虚血の所見はなく降圧療法を行った。第2病日に施行した腹部造影CTでは解離の進行はなかった。保存的加療で明らかな臓器虚血の所見はなかったが軽度の腹痛は残存しており,腹腔動脈起始部の狭窄があるため通常では問題とならないような解離や真腔狭窄により膵頭部アーケードへの血流が減少し腹腔動脈灌流域が虚血となる可能性があり,血流分布を正確に把握しかつ必要時には速やかに血管内治療を行うため血管造影を施行した。上腸間膜動脈造影において,上腸間膜動脈に起始部から長さ3cmの範囲で動脈解離による狭窄を認め,CT所見と一致した。狭窄の程度は最大50%程度で,偽腔は描出されず,血栓閉塞していると考えられた。前および後下膵十二指腸動脈はそれぞれ空腸動脈より分岐しており,その他の上腸間膜動脈末梢枝の描出も良好であった。また左肝動脈が発達した膵頭部アーケードを介して描出された。腹腔動脈造影では脾動脈,左胃動脈および腹腔動脈から直接分岐する右肝動脈の描出は良好であった。以後保存的加療継続で軽快し,第3病日には飲水を,第5病日には食事を開始し,腸管虚血を示唆する腹痛や肝虚血を示唆する肝酵素の上昇を認めず経過良好で,第13病日に退院した。腹腔動脈起始部狭窄を伴う孤立性上腸間膜動脈解離では,血流を直接観察可能な血管造影を施行し血流分布を正確に評価することで保存的加療も可能であることが示唆された。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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