心肺蘇生術に合併した胃破裂の1例
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概要
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心肺蘇生術に伴う合併症の一つである胃破裂は,発生率が約0.1%以下と報告されており稀な合併症である。今回,心肺蘇生術が原因と推測される胃破裂の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。症例は71歳の女性。統合失調症で某精神科病院に入院中であった。早朝に菓子を誤嚥し,心肺停止状態となっているのを発見された。直ちに看護師と当直医でバックバルブマスクと胸骨圧迫による心肺蘇生術を行い,約10分後に呼吸と心拍の再開を認めた。意識状態が不良なため,当院へ救急搬送となった。身体所見上,胸骨正中に広範囲に皮下出血を認め,腹部は著明に膨満しており,触診すると苦悶様表情を認めた。画像検査では腹部レントゲン写真で右横隔膜下にfree airを認め,腹部CTで多量の腹腔内遊離ガス像を認めた。以上の所見より消化管穿孔を疑い,緊急手術を行った。手術所見は,腹腔内に多量のガスを認めたが,腹水や胃内容物の流出はほとんど認められなかった。胃体上部小彎側の胃壁に発赤を認め,その周囲の漿膜内に小さな気泡を多数認めた。胃漿膜面からは明らかな損傷部を確認できなかったので,胃前壁を切開し,胃内腔を確認したところ約7cmにわたって胃粘膜の裂傷を認めた。明らかな全層にわたる裂傷は確認できなかったが,小さな裂傷部が存在しチェックバルブ様となり多量の腹腔内遊離ガスを生じたものと推測した。腹腔内を洗浄し,ドレーンを挿入して手術を終了した。術後経過は良好で第16病日に転院となった。心肺蘇生術に際し,不適切な換気による胃拡張状態とこれに加えて胸骨圧迫による急激な胃内圧の上昇により胃破裂の危険性が高まることを十分に認識する必要がある。また,心拍再開後に腹部膨満や腹膜炎徴候を認めた場合には,胃破裂を念頭に速やかに画像検査で診断をし,手術を行うことが重要である。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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