小児重症肝損傷による外傷性心停止の1救命例
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概要
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外傷性心停止症例の予後は極めて不良である。我々は3度の心停止にもかかわらず神経学的後遺症を残さず救命し得た,小児重症肝損傷症例を経験したので報告する。症例は5歳の男児で,荷崩れした木材の下敷きになり受傷した。出血性ショック状態で,当センター搬入直前に心肺停止(pulseless electorical activity: PEA)となった。救急外来にて直ちに心肺蘇生を開始し,16分後に心室細動となったため除細動を施行し心拍再開した。腹部造影CTにて肝右葉にIIIb型損傷を認め,緊急手術を行った。手術室にて2度PEAとなったが心拍再開した。ガーゼパッキングに加え,確実な止血目的に肝グリッソン右枝を一括結紮しICUへ入室した。合計心停止時間は31分間であった。その後も出血が持続したため3時間後に再開腹止血した。以後循環動態は安定し,受傷後27時間で肝右葉切除術を施行した。術後腹腔内膿瘍,手術部位感染,胆汁瘻を合併したが,神経学的後遺症を残さず第44病日他院へ転院となった。外傷性心停止例の小児例での生存率は4.8~8.0%で,現場でのCPA症例や頭頸部外傷例では生存は期待できない。しかし,本症例のように小児で,1)来院直前にCPAとなり心停止時間が比較的短く,2)かつその間に絶え間なく質の高い心肺蘇生法が施行され,3)頭頸部外傷がない,症例においては絶え間ない心肺蘇生により心拍再開が期待でき,心拍再開後はdamage control surgeryなどの迅速な治療により神経学的後遺症を残さずに救命し得ると考えられた。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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