リエントリー型高地肺水腫を来した日本人学童の1例
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概要
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患者は10歳の日本人学童。日本から移動して10か月間,標高3,400メートルの高地(ボリビアのラパス)でとくに問題なく生活していた。今回,4回目の低地旅行から帰って17時間後,咳症状を訴えるも,当初感冒と判断され安静臥床を指示されていた。その5時間後,泡沫状痰の喀出が認められ,SpO<SUB>2</SUB> はルーム・エア下で70%と低下し,酸素マスク使用でも83%までしか上昇しなかった。さらに両肺に乾性ラ音を聴取したため,緊急入院となった。胸部単純エックス線撮影では両肺に浸潤影を認めた。安静臥床に加え,酸素マスク吸入,デキサメタゾン静脈注射,アセタゾラミド(ダイアモックス<SUP>®</SUP>)経口内服を行った。第2病日には,SpO<SUB>2</SUB>は酸素マスク使用で96%と改善し,咳・痰喀出が減少し,両肺のラ音も減弱したので,当初予定していた最も有効な治療と思われる航空機による緊急低地移動は取りやめた。第4病日に独歩退院し,第5病日に登校開始した。急性高地障害の重症型として高地肺水腫は,一般には登山などで低地から高地に急に移動した際に生じるとされている。しかし,高地在住者の多いアジア,中南米では,高地在住者が一時的に低地に降りて,再び高地に戻って発症するリエントリー型高地肺水腫が主となっており,小児の発生率が高いとされている。日本人学童のリエントリー型高地肺水腫の症例報告は渉猟する限りない。本症例は,4回目のリエントリーで初めて高地肺水腫を来し,その後6回のリエントリーを繰り返しているが高地肺水腫を発症していない。なぜ,4回目のみ高地肺水腫を発症したか不明であるが,誘発要因としてウイルス性呼吸器感染,睡眠不足,運動などが考えられた。当初,感冒として対応し,その数時間後に呼吸困難を呈している。発見の遅れが重篤な結果を招くので,たとえ高地に慣れた者といえども,高地にいる限り,急性高地障害を念頭に置いて常に観察・対応しなければならない。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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